カレッジマネジメント236号
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Report和歌山県立田辺高等学校で、今で言うSDGsの視点を持った教育が始動したのは、2014年度からだ。この年より文部科学省のスーパーグローバルハイスクール(SGH、文末も参照)事業がスタート。同校もSGHアソシエイト校となり、グローバル人材の育成を推進する。その際に、そもそも「育てたいグローバル人材とは何か」という根本の議論から始め、結果、ESD(持続可能な開発のための教育)に着目。校内にESDの推進室を立ち上げ、2014年度より「持続可能な社会づくりに貢献することができる」ようなグローバル人材の育成を目指すようになったのだ。併せて思い描いた構想もある。まずは生徒が地元に目を向け、「郷土への誇りを持って、世界市民の一員として活躍する」という方向性だ。同校でESDを推進する小竹博允氏は、その意図を次のように語る。 「取り組みの原形をつくった先生がよく言っていたのは『生徒が自信を持てるようにしたい』ということです。本校の生徒の多くは、大学に進学し、その際に一度は県外に出ます。気がかりなのは、本校入学時のアンケートでは『地元に郷土への誇りを持って世界に打って出るツアーの企画を通じた地域探究と発信16リクルート カレッジマネジメント236 │Apr. - Jun. 2023愛着はあるが誇ることはできない』『自分にも自信を持てずにいる』という生徒が想像以上に多かったことなのです。そうした生徒達が、自ら地元の魅力を発見し、その地域社会をどうすれば持続できるかも自分達で考え、『郷土への誇り』と『地域に根差した活動の経験』を持って、全国や世界に打って出られるようにしたい、と考えています」2015年に国連でSDGsが採択され、持続可能な開発に向けた17の目標が示されると、生徒が郷土の持続性を考える土台としてこの概念も共有していった。同校のSDGs教育の核は、総合的な探究の時間だ。1年生は「地域の魅力と課題」を探究。コロナ禍前は、生徒学校DATA■生徒数821名(男子369名、女子452名)■進路状況(2021年度)大学218名、短大15名、専門学校27名、 就職・公務員13名、進学準備等35名ESD推進班小しのう竹博允 氏1年生のスタディツアーのプラン作成では、観光経済を研究する大学教授から、データ活用の専門家、SGDsに取り組む地元経営者等、様々な外部講師からも学ぶ。地元の田辺市は人口減少の課題にも直面しており、スタディツアーで地元の魅力を発信し、外とつながって「関係人口を創出する」ことは、地域の持続性を高める一手段でもある。進路指導部長清水昌樹 氏和歌山県立田辺高等学校「地元」の魅力の発見や持続化に挑み「世界」ともつながってSDGs達成を目指す2

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