カレッジマネジメント236号
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先輩から後輩へとバトンをつないでInterview高校生インタビュー農業の課題はSDGsとも結びついていた18リクルート カレッジマネジメント236 │Apr. - Jun. 2023動画発表によるレタス栽培試験の説明。私は青森県立名久井農業高等学校で、「環境研究班」のみんなと、SDGsを意識しながら塩害抑制技術を研究しました。「環境研究班」というのは、課題研究の授業のなかから生まれた班です。2年生から始まるこの授業では、班に分かれ、養液栽培、水耕装置等、色々な研究をするのですが、そのなかで「環境問題に農業の面から取り組みたい人達」で結成したのが環境研究班です。上の代から続く班で、そもそも私がこの活動に関わったのは、1年生の時に、環境研究班の先輩達のお手伝いをしたのがきっかけでした。手伝いの募集があって参加してみたら、困っている人のために農業の研究をする先輩達に関わるうちに「私も何か役に立ちたい」と思ったのです。私の塩害の研究は、先輩達がやってきた研究のうちの一つを引き継ぎ、発展させたものでもあります。研究に入るときに、先生からは「どうしてそうなったのか背景を知るといいよ」と教わりました。そこで塩害のことを調べていくと、自然にSDGsのことも学ぶことになりました。世界では、土壌内の水に溶けている塩類が、水分蒸発などで土壌表面に集積し、植物も作物も育たなくなる「塩害」が広がっています。それは砂漠化、飢餓、気候変動、まちづくり、働きがいなどにも関わる問題で、SDGsの17の目標と色々日々のデータ測定で効果も実証した。重なるからです。農業の一分野の研究でも、大きな目で捉えると、様々な問題が関係していることを知りました。私達が開発した塩害抑制技術は、土壌に石灰を加えた礫層を埋設し、地下水に含まれる塩類が土壌表面まで上がるのを食い止め、さらに土壌の水分を利用して石灰からカルシウムを溶出させて除塩までするもの。実現するまでに半年以上、何度も失敗をくり返し、検証のために毎日データを取って、発表のためにプレゼンの練習も重ねて。大変でしたが、全力でやり切ったと思えたし、賞を取ってスウェーデンの国際大会にも出場できて、頑張りが報われたのがうれしかったです。高校卒業後は、研究を続けるのではなく、自分のなかにできた別の夢に向かうために、専門学校に進みます。ただし、先輩がそうだったように、研究を継ぐ後輩達のことは今後もサポートしたいです。環境研究班が大切していることは、「どこでも、誰でも、簡単に使えるような技術」を目指すこと。たどりつくには長い時間が必要ですが、諦めずに研究を続けて、最終的には実用化できるといいな、と願っているので、後輩達をしっかり支えていきたいと思っています。青森県立名久井農業高等学校 3年生中居泉穂さんスウェーデンで行った研究発表。(文/松井大助)高校生の研究の積み重ねがSDGs達成に貢献すると信じて高校生発のSDGsの取り組み

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