カレッジマネジメント236号
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特集0129取り組みの周知等により志願者数が増加が違うため、コロナ収束を期待し、2023年度までの達成を新たな目標としている。2021年には、この経験を踏まえ、日本国内の大学において自然エネルギーの活用等を促進することを通じて、大学活動に伴う環境負荷を抑制し、脱炭素化を目指す「自然エネルギー大学リーグ」を設立。現在は11の大学の組織としての加入と、19大学の学長の個人としての加入があり、さらに教職員や専門家、学生、民間企業等が会員として活動している。「持続可能な社会の実現には、地域の環境・風土を活用し、その地域に合った多様な生活文化を営むことが必要。『まず隗より始めよ』の精神で、できる大学から取り組んでモデルを示せば、皆も真似してくれるだろう、そうして世界を良くしていこうという考えで取り組んでいます」と原科学長は話す。2019年には、SDGs推進の担い手となる治道家の育成強化のため、全学生に共通する基盤としての教育を行う基盤教育機構を設置した。学部間で重複があり過多となっていた科目数を整理し、全学共通のカリキュラム「基盤教育」を開始。高い倫理観や幅広い教養を身につける「共通教養科目」、千葉商大が「三言語(外国語、ITスキル、会計言語)」として重視する「外国語科目」「情報科目」「簿記会計科目」、人生100年時代を健康に生きていくうえで重要な「体育科目」等、7つの科目区分で整備している。1年次は学部横断的なクラス編成で基盤教育科目を中心に学び、2年次以降は学部ごとに専門的な知識を高めていくカリキュラム構成とした。「専門教育だけでは培われ難い大局的な見地や時代の変化を捉える力、高い倫理観の基礎を、基盤教育によって培うとともに、学部の枠を超えて交流することで、ダイバーシティへの理解も深めてもらいたい」と原科学長はその狙いを述べる。こうした一連の取り組みが大きな成果として表れたの12,00010,0008,0006,0004,0003,5894,1002,5002,000(人)14,0000が、2019年の過去5年間の一般入試志願者増加率日本一だ(週刊エコノミスト12月3日号(34〜35ページ)大学「何でもランキング」掲載)。この要因を原科学長は「本学の教育の伝統の周知と、東京23区内の私立大学の定員管理であふれ出した生徒の志願、SDGsの取り組みの目に見える成果、これら3つの要素の掛け合わせで生まれた効果」と説明する。「入学者に随分と学力も、意欲もある学生が増えてきました。入試担当者が高校をまわると、『千葉商大、最近面白いことやってますね』と言われることも多く、良い循環が生まれていると感じます」と続ける。SDGsの推進に取り組むうえで重要になってくるのが、教職員をはじめとした学内でのコミュニケーションだ。原科学長は「キャンパスが1つなので、日常的にコミュニケーションをとりやすい」「学長プロジェクトをやってきたおかげで、この6年間で教職員間のコミュニケーションが非常に良くなり、学部を超えてリスペクトし合う関係ができたことが大きい」と話す。他方で、経営企画部長として広報を行う柏木暢子氏は、「学長が建学の精神とSDGsの親和性や、それらの本質について繰り返し話すことで、学生や教職員の中で自分達の活動が社会価値の創出に貢献しているといった納得感が生まれ、SDGs推進に対する意識や活動のスピード感が高まる循環になっています。トップが発信するメッセージが浸透することは、組織にとって非常に重要」と話す。2021年からは、「働きやすく、事業優位性があり、SDGsに取り組んでいる企業」を「CUCミライアンス企業」とし、同大学ならではの学びを生かせる就職先として開拓することに着手。さらに今後は、「これまで取り組んできたことをしっかりと強化していくとともに、学生のサポートと留学生の受け入れを強化していきたい」と原科学長は話す。そのリーダーシップの下に進む取り組みに、さらなる期待がか(文/浅田夕香)かる。 12,2127,9655,43513,0549,106図2 志願者数の推移大学にとってのSDGs20142015201620172018201920202021(年度)

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