カレッジマネジメント236号
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高校教育現場の最大の課題は「教員の負担の大きさ」「高校教育改革に関する調査2022」に表れた現在の高校現場における学習指導・進路指導の課題とその背景、課題解決のために高校・大学・社会が取り組むべきことは何か。高校生の主体的な進路選択を応援する先生のための進路指導・キャリア教育専門誌『キャリアガイダンス』編集長と小誌編集長が対談を通して考察する。小林 まずは2022年度入学の高校1年生から実施されている「新学習指導要領」の目玉として注目される探究学習の取り組み状況について、調査結果をどう捉えていますか。赤土 2019年度から先行実施されていた「総合的な探究の時間」は95%の学校で導入が完了し、「主体性・多様性・協働性」の向上を6割が実感しています。新設された7つの探究科目(図1)については科目ごとの調査は行っていませんが、高校の教育現場で表立った混乱は見られません。ここ数年、取材や講演で高校に伺った際に探究が話題に上る頻度が増え、先生方の関心の高まりを感じます。ただし、「総合的な探究の時間」導入校の98%が何らかの課題を抱えており、導入校の8割が挙げた最大の課題は「教員の負担の大きさ」。次に「教員間の共通認識不足」(54%)、「教員の知識・理解不足」(44%)と続きます。小林 探究学習には「課題の設定」「情報の収集」「整理・分析」「まとめ・表現」の過程があり(図2)、これらを発展的に繰り返すことで学びが進んでいきます。先生方が特に指導に難しさを感じているのはどのあたりでしょうか。赤土 「課題の設定」です。旧学習指導要領の「総合的な学習の時間」にもこの過程はありました。ただ、課題そのものの定義はなく、「課題を解決する過程で自己の生き方を変える」のに対し、「総合的な探究の時間」では「自己の在り方生き方と一体で不可分な課題を自ら発見し、解決していく」とされ、「自ら解決したいと思う課題を発見すること」が重視されています(図3)。そういった「問いを見つけて自分ごと化する」ということは、先生自身も経験がなく、ファシリテーションが非常に難しいという声をよく聞きます。小林 確かに指導が難しそうです。赤土さんは高校生対象のアントレプレナーシッププログラム「高校生Ring」(※)にも関わっていますが、高校生の課題発見力を養うためのポイントは何だと思われますか。赤土 私はよく「半径5メートルから始めよう」と高校生に話しています。課題発見をそんなに難しく考えなくていい、という意味です。社会問題を解決するような事業も、最初は一人の起業家の小さな問いから始まっていたりします。まずはこの感覚を先生・生徒共に共有できるといいように思います。次に、課題を発見するには今いる場所をメタ認知する力48TALK大学が高校の「今」を知ることが、相互のニーズに合った連携につながる対談高校教育現場の課題・高大接続への期待高校教育改革調査2022から見えてきたこと

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