50探究で生まれた問いが、大学のどの研究にどうつながるのかキュラム・マネジメントの中核に位置づけることが求められているものの、実施できている学校は3割。「考えていない」学校も2021年度の調査から増加して2割あり、取り組み状況に格差、温度差が生じています。小林 「新学習指導要領」第一世代の現高校2年生が大学に入学するのは2025年。彼・彼女らの大半が世の中に出る2030年の社会で活躍する人材の育成は高大社の共通課題であり、ここからは少し高大連携の可能性を探りたいと思います。高校は大学の学びに対して、今最も期待していることは何でしょうか。赤土 高校での探究の学びで生まれた問いが、大学のどの研究にどうつながるのか、高校生に分かりやすい情報提供をしてほしい、という声を頻繁に聞きます。本調査の「大学・短期大学に期待すること」で「実際の講義・研究に高校生が触れる機会の増加」、「分かりやすい学部・学科名称」がいずれも5割近く、上位を占めているのもその表れだと思います。大学の学びに触れる機会として、オープンキャンパスへの期待値は本調査でも高く、模擬授業も人気です。ただ、高校生がやりたいことを見つけ、それを実現できる大学、学部・学科を判断するのは大人が想像する以上に難しいことです。そこに気づいたある大学では、高校生が探究学習などで培った学びの種を個人面談を通じて確認し、本人に合う学部・学科を他大学も含めてアドバイスしています。この面談は何度も受けにくる学生が毎年いるようです。小林 大学の先生が高校生の探究活動や課題研究の支援を行い、入試や入学後の教育につなげている例もあります。こうした個別最適化の取り組みは大学にとって負荷もありますが、高校や高校生に各大学の学びの特徴や面白さが伝わりやすく、今後より求められるようになるのではと思います。ところで、学びの高大連携といえば、大学の先生による出前講義といった従来からのプログラムに加え、大学の授業の高校へのネット配信といったICT活用、高校生の大学の科目履修制度に関する法令改正など多面的に取り組みが進んでいます。こうした状況を高校はどう捉えているのでしょうか。赤土 もちろん歓迎されていると思います。ただ、多くの高校に伺うなかで、私がよく考えさせられるテーマが「多様性」や「格差」です。最近、工業高校の先生から聞いた印象的なお話があります。優秀な成績の生徒が大学に進学しないと知って事情を聞くと、身近に大学卒の大人がいないために大学が何をするところなのかよく分からず、「自分にはハードルが高すぎる」というのが理由だったそうです。「大学入試に挑戦する学力は十分あるのにもったいない」と先生が嘆いていらっしゃいました。小林 大学にとっても機会損失です。赤土 大学が学びの場を高校生に開くのはとても意味のあることで、進学の意志が固く、主体的に行動できる人達にとっては絶好の情報収集の機会です。でも、そうでない高校生もたくさんいて、彼らも「学びの種」を持っています。それを引き出すために高校も頑張っていますが、大学が高校の学びの場にもう一歩踏み込んでいただけると高校生の進路選択の可能性がより広がると思います。先ほどの工業高校の先生も「大学の方々が高校を訪れ、高校生が大学での学びを身近に感じるような授業や講演をしていただける機会があれば、とてもありがたい」とおっしゃっていました。高校生がやりたいことを見つけ、それを実現できる大学、学部・学科を判断するのは大人が想像する以上に難しい。(赤土)
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