カレッジマネジメント236号
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51高校の「多様性」を意識した連携、情報発信を小林 高校での探究学習の推進もあって総合型選抜の導入など入試による高大接続も進められています。そんななか、今回の調査の「大学・短期大学に期待すること」で、「基礎学力を問う入試の拡大」が前回よりも大きく上昇して5位に挙がっているのが気になります。総合型選抜には学力評価も課されているのですが、この結果をどう解釈すればよいでしょうか。赤土 基礎学力を強化する指導に軸足を置き尽力されている先生方が多くいらっしゃいます。入試方式が多様化・複雑するなかで、「基礎学力をきちんと入試で見てほしい」という考えの表れかもしれないと考えています。また、総合型選抜の評価基準はアドミッション・ポリシー(AP)に準拠していますが、APは抽象的な表現で書かれたものも多く、従来の学力試験に比べて基準が明確でないと感じているのだと思います。高校生と一緒にAPを読み込み、受験指導をされていたベテランの先生から「不合格の生徒に理由を問われて答えが見当たらず、振り返りを次に生かしてあげられないのがつらかった」と伺ったことがあります。また、入試の多様化については、選抜方式が複雑化して情報収集や指導が追いつかず、負担を感じていらっしゃる先生も多いです。「進路指導上の課題」の調査結果も、「教員が進路指導を行うための時間の不足」(63%)が1位、「入学者選抜の多様化」(55%)が2位でした。小林 「選抜の多様化」は大学が高校までの学びをより幅広く評価していることの表れでもあり、高校生は「個」に合った大学を選びやすくなりますし、「新学習指導要領」の目指す学びのあり方ともマッチするはずです。ところが、大学の高校教育に対する期待が高校生や先生に伝わって※「アントレプレナーシップ」を身につける機会を提供する高校生のための参加型プログラム(株式会社リクルート主催)ないのですね。高校の先生から「探究活動が大学入試で評価されない」という声をよく聞きますが、これも同じ図式だと思います。高校側の不安を解消するには、大学が高校への期待をもっと分かりやすい形で発信していく必要がありそうです。赤土 今は高校教育も過渡期にあって先生方の負荷が増えています。高校側も今はまだ「新学習指導要領」の目指す学びのあり方を十分には形にできていないというジレンマがあります。ただ、大学と高校の相互理解が足りていないのも事実かもしれません。今回の「高校教育改革調査」から見えてきた高大の相互理解のポイントは「多様性」だと思います。高校教育の現場は今、非常に多様化しています。公立・私立だけでなく、普通学科の高校もあれば、総合高校、専門高校もあって、進路多様校には私が携わっている探究学習プログラムで有名起業家がうなるような発想と行動力を持つ生徒もいれば、学びにすっかり自信をなくしている生徒もいます。この「多様性」の中に高大連携をどう位置づけていくのか。高校教育の「今」を知っていただき、そこにある課題を解決する道筋を一緒に考えていただくことが、お互いのニーズに合った連携や、高校生や先生に分かりやすく伝わる情報発信につながるのだと思います。小林 同感です。今回の調査からは様々な課題も読み取れましたが、若者の育成、自立に向けて一所懸命取り組んでいるからこそ課題も生まれるのだと思います。大学も同じです。2030年の社会に若者が羽ばたいていく姿を楽しみに、大人達が手を携えて頑張りたいですね。(文/泉 彩子)特集02高校の指導と大学への期待高校側の不安を解消するには、大学が高校への期待をもっと分かりやすく伝えていく必要がある。(小林)

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