カレッジマネジメント236号
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専攻の学びを社会実装する過程で価値創出のリアリティを修得する学生の力や興味を伸ばす手段としてのメタバース64リクルート カレッジマネジメント236 │ Apr. - Jun. 2023バース上で大学教育を展開していくことも見据え、今回のプロジェクトが動いている。単にデジタルを用いたツールというだけではなく、全学教育改善の動きだと言えよう。「大学でやっていることを価値として社会に認めてもらうためには、やはり具体的な社会貢献のアウトプットが必要です。本学の教育成果をどう地域社会に役立ててもらうかを常に念頭に置きたい」と横山教授は述べる。地域実践を教育に還元し、教育をチューニングしながら地域へ価値として返す。こうした循環を将来にわたって構築していくことが肝要である。プロジェクト運営の主体は学生だ。実務のナレッジ継承を考えてクラブを立ち上げ、2023年1月現在50名ほどが参加。企画・制作・検証の3つのグループに分かれて活動している。「BlenderやHubsを使ってメタバースに岐阜女子大学や下呂温泉の建物を造っています」と学生の1人は話す。提携するシステム大手のポストケアジャパン社の指導を受けながら、精密さを求めればデータ量が膨大になり、簡易すぎては見栄えが悪くなるといった、インターフェースやユーザビリティを含めた実装と理論のバランスをも学んでいく。女子大生であることを活かしたファンシーなデザインにも挑戦しているという。現在は多言語対応を検討中だ。最終的には、下呂市役所や下呂駅等の公共施設や歴史・文化財資源、温泉地区を中心とした観光資源を構築し、利用者にアバターとして訪れてもらい、情報収集や市内を散策してもらうことを目指す。旅館等も建築し、外観だけでなく、美術品等の内装品を見たり、土産物屋で買い物したりできるようにしたいという。初めて触るソフト等の難しさがありつつも、「もともと3Dモデリングに興味があり、専攻でも学んだうえで具体的な社会実装に関わることができて楽しい」という学生が多いようだ。今後の人材ニーズの高さにも期待しているという。授業ではドローンを飛ばして360度カメラを使って撮影し、そのデータをメタバース上で組み上げるといった経験もしている。また、この活動から学んだこととして、取材に対応してくれた学生3名全員が「コミュニケーション力」「横断的に物事を進める時の調整や意思疎通」を挙げた。興味関心に即した学びを実現する手段としてのみならず、プロジェクトマネジメント等、実際に社会で物事を動かしていく際のリアリティを実際の価値創出スキームをベースに学ぶことができるのは大きそうだ。企画から制作へと段階が進み、基盤整備がある程度完了すれば、実際に観光客が集まるか、日本の他地域に展開できるかといった検証フェーズに入る。「同様の取り組みを他地域から要請されたりもしますが、まずは3年きっちりやりきって、効果検証してから次に行きたい」と横山教授は述べる。また、メタバースを介して小中高の遠隔協働学習、高校生や一般向けの講座開講といった展開も見据える。「メタバースの中で様々な属性の方々が一緒に学習したり情報交換したりする等、新たな教育の在り方を研究して地域活性につなげていきたい」と横山教授は話す。将来的な大学教育への活用として、メタバース大学内に外部交流の場を創る等の構築も進めていく。メタバース空間は特別支援の学生も自由に動き回ることができ、インクルーシブな環境整備としても有効だ。既にこうした事業を利用した高大接続事業等にも展開しており、大学の独自性として立てていく方針だという。2024年度からは全学の学生が初年次からメタバースで学べるようにする予定だ。前述の通り、これまでも同大学は、健康栄養学科で地域の素材を活かした食事を考案したり、住居学専攻で地域の空き家リノベーションを手掛けたりと、学んだ内容を地域に実際に役立てる教育を展開してきた。最近ではメタバースに冬の白川郷を作り、沖縄や岐阜の4つの小学校の児童をメタバース内に招いたばかり。今後も学びの内容を実社会に実装する経験を学生に多く積ませたいという。「女子大ならではの活躍フィールドを探したいのはもちろんですが、女子大だからではなく、学生の力や興味を伸ばす機会を創りたい」と横山教授は力を籠める。学生本位の学修を考えればこそのメタバース利活用なのである。今後の展開にも注目したい。(文/鹿島 梓)

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