70リクルートカレッジマネジメント236│Apr. - Jun. 2023上智大学は、高校生と大学生が探究学習において協働するプログラムを、2022年度から全学共通科目として開講した。その経緯と新たな高大接続教育の可能性について、プログラム担当で特任助教の新 江梨佳氏にお話を伺った。今回の事業の背景には、同大学が2020年から実施してきた「せかい探究部」の活動がある。これは同大学を運営する学校法人上智学院が、東南アジアフィールドからグローバルで実践的な学びの場を創出することを目的としてタイ・バンコクに設置した教育・研究事業会社、Sophia Global Education and Discovery Co., Ltd. (Sophia GED)が展開する活動だ。新氏は同社の教育プログラムディレクターであり、せかい探究部の監督でもある。「せかい探究部」はオンライン探究学習プログラムで、個人参加30名程度を対象に、東南アジアをはじめとする世界のフィールドで自ら設定する探究テーマについて、探究・論文執筆に10カ月かけて挑戦し、そのプロセスを大学教員や研究者が伴走支援するというものだ。主な活動とその設計を図に示したが、軸になるのは「わくわく感」だという。「自分で調べたい、深めたいと思えるテーマを見いだすところが起点になります。それさえ見つかれば、生徒達は行動力に火がついて進んでいきますが、テーマ設定で妥協してしまうと、後になって深めるプロセスが苦しくなってきます」と新氏は話す。10カ月にも及ぶ活動だからこそ誤魔化しがきかず、テーマの妥協が成果に直結してしまう。そのため、ワークシート作成や個別ゼミの時点で何度もストロークを重ねながら突き詰めていくという。この活動は上智大学が進める教育改革と無関係ではない。同大学は長期計画「グランド・レイアウト2.1」にて、重点計画の1つに「次世代社会へ向けた学部教育の再構築」を掲げ、2022年度より全学共通教育改革を行っている。その趣旨は、変化の激しい社会でも主体的に生きていける「自立した学修者」として学生を育てるというものだ(※)。自分の「わくわく感」を起点に探究を進めていくというプロセスはこうした趣旨に重なる。「せかい探究部」の活動は、上智大学が教育の軸に据えるコンセプトを体現する内容でもあるのだ。新氏は「本学の強みであるグローバル領域の人脈や研究を、事業会社が機動力ある教育実践プログラムとして高校生に提供し、それを今回、本学の基盤教育改革に接続することで、高大接続を実現することができました」と話す。どういうことか。もともとSophia GEDはスタディーツアーをメインに事業展開する予定だったが、立ち上げ時期にコロナ禍が直撃し、オンライン展開を余儀なくされた。「せかい探究部」は、4月に構想・設計し、5月に募集、6月にパイロット版というスピード感で立ち上げたという。1年目に高校生に大学のリソースを使った探究プログラムを提供し、手ごたえを得て2年目に量的拡大を図り、対応可能な範囲を見極めたう特任助教新 江梨佳 氏入試は社会へのメッセージ高校生対象のオンライン探究学習プログラム「せかい探究部」上智大学の共通教育改革とのリンク量的拡大を経て高大接続という縦の連結にチャレンジ事例report 上智大学 カレッジレディネス醸成と探究支援のプロセスを重ねる「せかい探究部」
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