カレッジマネジメント236号
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各大学がパワーアップするための連携の形を模索72リクルート カレッジマネジメント236 │ Apr. - Jun. 20232023年4月から、四国の5つの国立大学(徳島大学、鳴門教育大学、香川大学、愛媛大学、高知大学)において、「連携教職課程」(図1)がスタートした。5大学それぞれの教員養成の科目を連携し、教職を目指す学生に幅広い教育を提供していこうというものだ。地域連携による教員養成の連携例としては、群馬大学と宇都宮大学の「共同教育学部」のような事例がある(※1)。本稿の四国の「連携教職課程」では、あえて各大学ごとの単位取得を前提として、あくまで他大学の科目の乗り入れを実現するという形を作りあげた。なぜ四国5大学はこのような独自の連携を目指したのか、その課題背景、四国5国立大学の教職課程の目的と、「連携教職課程」を実現するための体制づくりについて、四国地域大学ネットワーク機構の代表理事を務める鳴門教育大学長・佐古秀一氏に伺った。四国の大きな課題として、18歳人口の減少、関西都市圏への学生の流出率の増加がある。2040年には四国4県の大学の定員充足率は7~8割ほどになると予測されている(※2)。このような人口減少が進む社会において、教員養成系学部・大学の役割とは何か。四国では5国立大学が連携してこの問題に取り組み、2017年、四国の教職大学院による連携協力推進協議会を設置、2018年には4つの教職大学院で単位互換協定をスタートさせている。「この協定を通じて、各教育学部がお互いに率直に話し合える環境ができました。将来の教員養成系学部の行く末や、四国の今後の課題を自由に意見交換する中で出てきたのが、5大学の連携は教職大学院だけではなく、学部段階にも必要だということでした。四国の学長会議にその報告が出され、それをもとに学部段階での教職課程の連携を具体化する検討が始まりました」。教員養成は、学校現場が抱える課題が複雑化・多様化していることもあり、学生に幅広く高度な知識を教える必要がある。四国内の大学は教員数としては必要人数を満たしているが、教員養成の多様な分野に対応できるかというとどの大学も苦しい状況だった。今後の教員養成を考えたときに、単独の大学が自前のリソースだけで教員養成することに限界がある。その問題を解決するため、お互いの大学がリソースを持ち寄り、学生に豊かな教育を提供する仕組みを構築しようというのが狙いである。そこから5国立大学の教職課程をどのような形で連携すべきかの模索が始まった。5大学で一つの共同教育学部を作るという考え方もあったが、四国の連携では、「広域分散協働」という方針を選択した。教員養成だけではなく、人材育成を図るという意義も含め、連携しながらも各県にある大学がそれぞれにパワーアップしながら、地域を支えてい四国地域大学ネットワーク機構 代表理事鳴門教育大学 学長佐古秀一氏四国地域大学ネットワーク機構「教員を目指すなら四国」5国立大が教職課程の協力体制をスタート地域連携で発展する大学 #6

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