単なる連携ではなく、相乗効果を生む連携を連携によって学生は他大学の様々な科目を履修することが可能になる。美術の科目を例に見てみると、大学のリソースを集めることで、多様な授業がラインアップされ、選択の幅が広がっていることが分かる。教職課程の授業設計には各学部長等で構成される準備委員会と、教員が参加したワーキンググループが大きな役割を果たしてきた。各大学の科目を相乗りさせる設計には様々な課題がある。授業はオンラインか対面か。美術と家庭の実技は学生がどのキャンパスに足を運ぶのか。また、無理なく単位取得できるための授業の曜日・時間もパズルのように複雑になる。ワーキンググループではそれら一つひとつを解決しながら科目を組み立てていった。また、こういった検討の過程から、魅力的な授業づくりに向けた新たな動きも生まれてきた。「学生にとってより魅力的な授業をどのようにすれば作れるか、各大学の教員の間で議論されるようになっている四国5国立大学は、連携教職課程の実現のため、「大学等連携推進法人」の申請と「連携教職課程」の設置申請の2つの委員会を立ち上げ、活動を進めてきた。図は取材当時の組織体制。学長がトップとなる協議会の下にそれぞれの委員会があり、さらにワーキンググループで現場に即した具体的な検討が進められた。役割構成員連携教職課程及び連携開設科目に係る以下の事項の調整・大学間の申し合わせ、評価基準・その他教科間共通で調整が必要な事項(学年暦、履修登録方法、教育の質保証方法等)役割連携教職課程及び連携開設科目に係る以下の事項の調整・カリキュラム及び授業科目の具体的内容・その他各教科で調整が必要な事項役割リクルート カレッジマネジメント236 │ Apr. - Jun. 2023「大学等連携推進法人」に係る諸事項及び将来計画の協議各学長令和5年度連携教職課程の設置に必要な以下事項の実務作業・教学管理体制に係る事務調整事項の案作成について(申し合わせ、成績管理、履修登録等)役割と聞いています。連携教職課程では、それぞれの大学が開講している授業を他大学生に開放すればいいだけ、とも言えるわけですが、せっかく連携するなら今までやってきたことだけではなく、この機会に新しい授業を作ろうという動きが生まれているのです。各大学の先生方が担当される授業枠を超え、1人では扱えないような先端的な授業を企画したり、著名な方を先生として招聘した授業といった計画が出ています」。大学が連携することで新しい取り組みのための資金ができたという面もある。だが佐古氏は、「一番大きいのは大学の枠を超えた教員の交流にある」と語る。「今までは大学ごとに閉じたカリキュラムを運営しているだけでしたが、相互に対話するようになると、『こんな授業があるといいよね』『こういう人の話を学生に聞かせたいね』といった話が出てくるようになっています。これは連携教職課程の非常に大きな影響、成果だと思っています」。他大学の教員との交流によって教員の視野が広がり、一緒に協働できる仲間が増えたという感覚が、良い授業を作ろうという力につながる。「中教審でも、連携の成果はリソースを提供し合うだけで四国地域大学ネットワーク機構が設立された2021年3月の設立式の様子。四国の国立大学5校の学長がディスプレーを通じて連携する様子が披露された。さらに1年後の2022年3月、同機構は「大学等連携推進法人」に認定された。連携教職課程部会連携教職課程部会(美術)74図2 大学等連携推進法人申請と連携教職課程の検討体制大学等連携推進法人協議会連携教職課程委員会連携教職課程部会(家庭)(情報)連携教職課程事務準備WG地域連携で発展する大学
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