76社会のニードに応え続け「改革が日常」に物心両面にわたる学内共有と意思決定の迅速さ京都市山科区に所在し、国際英語、文、発達教育、総合心理、経済、経営、工、看護、健康科学の9学部、学生数約6000名を擁する京都橘大学。西陣織の技能習得による女性の自営独立を目指し、1902年に中森孟夫が創設した京都女子手藝学校を礎とする。開学当初から社会に有為な学生を育てることを強く意識し、社会のニードに応える学びを取り入れようと、不断の変革を続けてきた大学だ。2005年に男女共学化し、大学名を京都橘大学へと改称。それまでの人文社会系から初めて医療系へと踏み込む看護学部を設置した。2008年には現代ビジネス学部(のちの経済、経営学部)を設置、2012年に設置した健康科学部は領域を拡大し、4学科までに成長している(図1)。2015年には長期計画〈Master Plan 2022〉を策定し、第1次マスタープラン(2015-18)では2017年に国際英語学部と発達教育学部を設置。第2次マスタープラン(2019-22)では、2021年に初の理系学部となる工学部と、経済学部、経営学部の3学部を同時設置し、3学部合同PBL型の授業(図2)等、クロスオーバー科目の充実による文理横断教育を実現した。日比野英子学長は「本学では改革が日常。なかでも工学部設置は最近の一番大きな改革で、3学部同時開設が重要だった」と振り返る。創設120周年を控えた2019年、タグラインの刷新とリブランディングを行った。新時代を進むには、未来のありたい姿と学内の気持ちを一つにする合言葉が必要だと考えたからだ。若手メンバーで議論し、生まれたタグラインは『変化を楽しむ人であれ』。これを高校生に効果的に伝える新コンセプトとして『予想外にいこう』を掲げた(図3)。「予測困難な時代にも自分の軸や価値基準をしっかり持って、変化を楽しめる人になってほしいという想いを込めた。また橘がやれば社会にどんな新しい価値を生み出せるかという話は常に学内で出るので、既定路線ではなく新しい発想で、現状維持をやめるのが『予想外にいこう』だった」と語るのは石原雅子広報課長だ。入試広報でも、なぜ橘が新しい学科を作るか、そこに自分が入ったらどんな未来が作れるのか等、具体的なメッセージで理解してもらう工夫をしている。今後は関西圏だけではなく、様々な地域から学生が集い、また社会人や留学生も積極的に受け入れ、キャンパスの多様性を担保していきたいという。タグラインの刷新と同時期に、それを象徴する新棟「アカデミックリンクス」(図4)を竣工し、事務オフィスにフリーアドレスを導入した。毎週くじ引きで席替えをし、部署を超えた日常会話の中で学内共有を早めた。教職員の距離も近く、学内の思いが同じ方向を向き一体感が醸成されているという。日比野学長いわく「タグラインとフリーアドレス、物心両面にわたり意思決定の迅速さにつながる構造がある」ようだ。日比野 英子 学長800近い大学があるなか、その大学ならではの独自性をいかに確立するか、そしてどのように高校生をはじめとするステイクホルダーに伝えていくかは、大学の経営戦略における生命線ともいえるだろう。本企画では、選ばれる大学としてのブランドを明確化するとともに、ブランド力向上のためのコミュニケーション戦略を磨き続ける大学を紹介する。#5京都橘大学予測困難な時代に改革・挑戦を続け、文理横断の新たな学びで「総合知」を涵養
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