tnemeganaM ytisrevi IgnitavonnnU教育社会学者で文部大臣を務めた永井道雄はその著書『大学の可能性』(中央公論社,1969)で、「急速に展開している社会変化に対して、大学の制度及び組織が時代遅れだということです」と述べている。いつの時代においても、社会変化は急速であり、変化に適応できない大学への視線が厳しいことを改めて認識させられる一文である。ただ、現在起きている変化は、これまでとは比較にならない大きさであり、かつ加速度的に進行している。加えて、これから起き得ることへの期待より不安のほうが大きいと言えよう。その第一が地球温暖化である。2022年2月にまとめられたIPCC第6次評価報告書第2作業部会報告書(「政策決定者向け要約」環境省による暫定訳)では、「人為起源の気候変動は、極端現象の頻度と強度の増加を伴い、自然と人間に対して、広範囲にわたる悪影響とそれに関連した損失と損害を、自然の気候変動の範囲を超えて引き起こしている」とし、「地球温暖化が、次の数十年間又はそれ以降に、一時的に1.5℃を越える場合(オーバーシュート)、1.5℃以下に留まる場合と比べて、多くの人間と自然のシステムが深刻なリスクに追加的に直面する」との認識が示されている。東西冷戦の終結により平和と安定に向かうと考えられた国際情勢も、中国をはじめとする権威主義国家の影響力増大により不安定さを増し、軍事的緊張が高まり、政治・経済両面での分断が進みつつある。リクルート カレッジマネジメント236 │ Apr. - Jun. 2023世界が協力して地球規模問題に取り組むことが求められている中、分断化が進むことは自然環境や人類社会の持続可能性に極めて深刻な影響をもたらすことになる。もう一点、2008年のリーマンショック以降、低インフレが続いていた世界経済が急速なインフレに転じたことも多くの生活者を不安に陥れている。2023年1月に国際通貨基金が公表した「世界経済見通し改訂版」は、2022年に8.8%に達した世界のインフレ率が2023年6.6%、2024年4.3%と鈍化していく見通しを示す一方で、経済の下振れリスクとしてインフレの長期化を挙げている。国内に目を転じると、世界に例を見ない速度で進む少子高齢化と長期にわたる経済の停滞により、我が国の先行きに暗雲が垂れ込めている。2022年の出生数は80万人を割り、統計開始以来過去最少となった。2040年の18歳人口は2018年11月の中教審グランドデザイン答申が前提とする88万人を大幅に下回ることになる。2022年9月1日現在の日本の総人口1億2497万人のうち15〜64歳は7420万人、65歳以上は3624万人であり、二人の現役世代で1人の高齢者を支える状態であるが(総務省統計局)、2040年には総人口1億1091万人のうち15〜64歳は5977万人、65歳以上は3920万人となり、約1.5人の現役世代で1人の高齢者を支えることになる(国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(平成29年推計)」の出生中位・死亡中位仮定)。情報・システム研究機構監事 東京家政学院理事長8099吉武博通大学を強くする深刻化する地球温暖化と国際情勢の不安定化「大学経営改革」我が国の将来に垂れ込める暗雲と若者の意識激動の時代の大学経営を考える──情勢に翻弄されず変化に適応するために
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