カレッジマネジメント236号
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tnemeganaM ytisrevi IgnitavonnnU4つの大分類ごとの順位は、経済状況20位、政府効率性39位、ビジネス効率性51位、インフラ22位であり、その下の小分類では、雇用2位、科学インフラ8位、健康・環境9位に対して、財政62位、経営プラクティス63位と、日本の財政や企業の経営に厳しい評価が示されている。大学に対して、国は次々と新たな政策を示し、経済界からも厳しい注文がつく。これらに急き立てられるように「改革」を競っているのが大学の現状である。そのため、大学の視線や意識はどうしても国やその背後にいる経済界に向きがちになる。しかし、教育や科学以上に問われているのは、財政をはじめとする政府効率であり、経営プラクティスをはじめとするビジネス効率なのである。もちろん、IMDの年鑑は一つの見方に過ぎず、大学も長年同じような指摘を受けながら、十分な変革が行えていないことは確かである。しかしながら自らも大きな問題を抱えるセクターからの一方向的な指示や要請だけが改革の契機となって良いのだろうか。大学自らが、より直接的に人類社会や日本社会の課題に向き合い、大学の未来を構想すべき時が来ているのではないか。それが本稿の主張である。そのために大学が重視すべき課題を5点に絞って挙げ深刻化する地球温暖化不安定化する国際情勢学生と共に考えるておきたい。一つ目は、「学生と共に」、地球や世界、日本社会の未来を考え、社会をより良くするために何が必要か、自分にできることは何かを考えるということである。就職だけを考えるといわゆる超氷河期等今より厳しい時期はあっただろうが、これまでとは規模も内容も異なる難問が若者の未来に横たわっている。彼ら彼女らはそれぞれの立場でこれらの課題に取り組みながら、より良く生きることを追求していかなければならない。4年間という限られた時間にそのための準備をどうしておけば良いか、学生と共に考え、支援することが何よりも重要である。二つ目は、「俯瞰的視野を持ち、現実を直視」するということである。大学も象牙の塔と揶揄されることは少なくなったかもしれないが、依然として大学や学部、専門分野、担当部署に閉じ籠る傾向は続いている。これから社会に出ていく学生を待ち受ける現実を理解せずして、どうして学生を指導することができようか。俯瞰的視野を持ち、現実を直視することのできる教職員をどう育てるか。FDやSDが最も問われているのはそのことである。三つ目は、「縦のつながりと横のつながり」をより太く密度の濃いものにするということである。ここでいう縦のつながりとは、初等、中等、高等の各教育段階から社会までの連携・協働を意味する。高大連携が進みつつあるが、受験生確保が目的であったり、特定の教職加速する少子高齢化低成長とシェア低下縦のつながり横のつながりダイバーシティとDX大学を強くする「大学経営改革」82激動の時代の大学経営において重視すべき課題(概念図)<人類社会・日本社会の課題>俯瞰的視野と現実の直視働きがいがあり働きやすい職場デジタル技術がもたらす急速な変化自由のための規律自前主義からの脱却第一は「学生と共に」考えること

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