C O L U M N11総合知で解のない課題に挑む総力特集 未来をつくるデジタル人材と教育大学は受け身の姿勢を崩し自律的に社会をけん引する存在に変容を 各省より一段高い立場から、科学技術の振興を図るための基本的な政策や重要事項の調査審議等を行うことを目的とした「重要政策に関する会議」の一つ、CSTI。現在の官邸主導政治にあってその果たす役割は大きい。近年の政策動向のポイントについて、生田参事官にインタビューした。 2020年の法改正で、基本計画の対象に「人文・社会科学の振興」と「イノベーションの創出」を追加し、本格的な社会変革に着手することになりました。第6期基本計画のキーワードは、ウェルビーイング。予測不可能な社会にあっては、誰かが作ってくれる社会を受け入れるのではなく、自らの行動が社会を良い方向に変えられるという意識と、それを様々なアプローチで実現できるという事実を正しく認識することが大切です。いわば、経済的価値に留まらず、人間関係の豊かさや協調・調和といった社会的価値の創造を通じて社会を変えるという視座の下、多様な市民内閣府 総合科学技術・イノベーション推進事務局参事官 生田知子氏に聞く社会像変容のターニングポイント推進委員会PD(議長)、サブPD等、関係府省、研究推進法人、内閣府(事務局)課題ごとに以下の体制を整備がそれぞれの幸せを求めて主体的に社会参画をしていくことで、Society 5.0が実現できると言い換えてもいいでしょう。このように第6期基本計画では、国内外の情勢変化を踏まえ、Society 5.0をより具体的な未来社会像として、世界に示そうとしています。 もう一つのキーワードが「総合知」です。その意図するところは、単なる文理融合に留まらず、既存の縦割り学問では解けない問題に横のつながりで挑むというシフトチェンジです。内閣府では、戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)制度を活用し、Society 5.0のショーケースを、総合知を通じてリアルに創り上げることを目指しています。その取り組みでは、自らの生き方を主体的に考え、異なる価値観を認め、他者と協働する意欲や態度を持った多様なプレイヤーが、横断的な枠組みで解のない問いに向き合うことが必要であるとの認識の下、社会構造の変化を踏まえ、個別最適・協働的な学びへの転換や、地域社会の協力による学ぶ場の多様性の確保等、新たな学びをデザインしていくことを狙っています。 また、大学の社会貢献は、従来は社会起点で必要な人材や技術を大学が提供するのが主でしたが、社会が不透明になっていく状況下、大学としては、新たな価値創造を通じて、次代の社会構造の転換を自ら促していく能動性が大事になってくるでしょう。VUCAの時代は、常にアジャイルに組み直す対応力、レジリエンスが必須ですが、これに対応できる多様性を持ち、総合知を持続的に生み出し続けることができるのは大学しかありません。日本の様々な地域でそうした動きが活性化してくれば、社会全体がSociety 5.0の実現へと向かうと考えています。リクルート カレッジマネジメント237 │Jul. - Sep. 2023※所属・肩書は取材時点(2023年3月17日)のもの図 SIPプログラムの仕組み総合科学技術・イノベーション会議ガバニングボード(CSTI有識者議員)プログラム統括PD(プログラムディレクター)大学、国立研究開発法人等、企業 等デジタル化時代の人材育成をリードする総合科学技術・イノベーション会議(CSTI)
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