カレッジマネジメント237号
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C O L U M N未来に必要な人材育成は各大学の自分事としてのビジョンが軸となる 2021年9月に設立して以降、デジタルに関する政策を網羅的に展開するデジタル庁。そのなかのデジタル人材育成に関する文脈について、前デジタル庁参事官補佐で戸田市教育委員会事務局次長兼教育政策室長の横田洋和氏にインタビューした。─デジタル庁が掲げるビジョンと役割について教えて下さい。 ビジョンとして掲げているのは、「デジタルの活用により、一人ひとりのニーズに合ったサービスを選ぶことができ、多様な幸せが実現できる社会」です。それは、Society 5.0の実現に直接資するものであり、「誰一人取り残されない、人に優しいデジタル化」を実現することにもつながるという発想です。それに向けた制度構築として、2000年に制定されたIT基本法を全面的に見直し、2021年9月にはデジタル庁創設と同時に、後継となる「デジタル社会形成基本法」が施行されました。全国民が情報通信技術の恩恵を享受できる社会を実現するための施策を、関係省庁と連携して講じるのがデジタル庁の役目と言えます。─デジタル庁設立に先駆けて、2021年6月には「デジタル社会の実現に向けた重点計画」が閣議決定されています。 重点計画は2023年3月段階で3つ公表されていますが、準拠する法律が変わったほか、2021年12月の計画では構成も大きく見直されました。なかでも、「デジタル人材の育成・確保」については、高等教育機関にも大きく影響する箇所かと思います。デジタル庁としても様々なレイヤー・レベル感でデジタルに係る人材が不足していると課題認識しており、それを各教育段階でどう育んでいくのか、あるいは社会人教育の必要性等についても言及しています。12リクルート カレッジマネジメント237 │Jul. - Sep. 2023前デジタル庁参事官補佐 横田洋和氏に聞く※進学総研サイト掲載記事https://souken.shingakunet.com/higher/2022/05/post-3269.html─2021年12月に閣議決定されたデジタル原則は、デジタルの観点から全ての行政・規制を見直すというセンセーショナルな内容でした。 目指すべきデジタル社会が、既存の規制等が阻害要因となって実現できないことがないように、構造改革の先鞭として、デジタル社会の原則に即した全般的な見直しを図ろうとする動きです。国は2022年7月から3年間を「集中改革期間」と位置づけ、各省庁の1万以上の法令・告示・通知等を対象に、アナログ規制の横断的見直しを進めています。本年3月には一括法案も提出されました。─大学経営者はデジタル庁の動きをどう捉えればよいでしょうか。 重点計画のデジタル人材育成関連箇所や、2022年1月に公表された「教育データ利活用ロードマップ」を見ていただくのがよいと思います(※)。ロードマップでは基本的な考え方として、まず「教育データについて標準化を進め、業務負担を軽減することで、デジタル化によるメリットを理解・享受すること」があります。そのうえで、デジタル利活用が推進され、産官学でデータ連携が実現し、学習者主体の学びや、真に「個別最適な学び」と「協働的な学び」が実現するという工程を描いています。 各大学の改革にデジタル人材育成をどう組み込むかについては、どのレベルの人材をどの程度育成輩出するのか、という各大学の特色も踏まえた観点が必須でしょう。政府が言っているからという「他人事」ではなく、未来に必要な人材育成について、本学はこうしたい、というトップのビジョンが全ての軸になると思います。デジタル庁が教育政策に期待するもの

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