カレッジマネジメント237号
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14STEAM教育や文理横断による総合知の創出、理系分野における女性比率の増加、教育の質保証強化、リカレント教育強化といった総合プランとも言うべき内容だ。大学への期待は大きいが、既存のままではダメであることは明白である。未来社会全体に関するデジタル政策を教育政策に転換するには、教育側のロジックに組み直す必要がある。例えば、2018年の文部科学省「Society 5.0に向けた人材育成に係る大臣懇談会」報告書では、Society 5.0時代の学校の在り方として「学校ver.3.0」を示した。デジタル化は2.0が3.0に移行するためのキーであり、1.0時代から一人ひとりの教師が自発的・内発的に追求してきた「学びの個別最適化」を実現する手段として捉えていた。では、大学政策についてはどうか。「これまでの大学の構造は工業化社会に必要な人材として、大量のホワイトカラーをどう育成するかが軸足になっている」と合田氏は述べる。かつての社会では労働市場と教育構造のニーズがマッチしていたが、現在デジタル化の構造のなかでそれが反転しており、この分野構造では、イノベーションの思考に親和性の高い理系の芽を摘んでしまう可能性がある。理系ありきなのではなく、新たな社会構造に合わせた大学の在り方をフラットに作り直す必要があるということだ。情報教育の強化デジタル社会に必要な情報教育を、学校教育から社会人プログラムまで、生涯にわたって学び直せる機会として充実させ、国民誰もが情報リテラシー(情報活用能力) を高めることができるようにします。人材育成環境の整備デジタル社会の担い手となる人材が地域や世界で活躍し、教育機関や企業から育っていくための環境を整備します。また、女性がデジタル社会で活躍するための支援を行います。これは、デジタル社会の形成のために政府が迅速かつ重点的に取り組むべき施策を示したものである。「誰一人取り残されないデジタル社会の実現」等の基本原則を示したうえで、デジタル人材の育成・確保についてもその必要性が改めて示されている(図4)。デジタル改革の担い手の不足を課題としたうえで、ライフステージに応じたデジタルリテラシーの向上、官民学を行き来しながらのキャリア形成、人材の創造性を生かせる環境の整備推進等により、人材の底上げと専門性の向上を図り、一人ひとりのデジタル人材が活躍する社会を目指すとされている。こうした方策は当然教育の場としての大学に対する期待値でもあり、一層の充実が望まれる。また、デジタル化による地域活性をうたうデジタル田園都市国家構想の実現に向けた取り組みについても言及されている。デジタル庁「デジタル社会の実現に向けた重点計画 紹介資料」より引用行政機関での人材確保デジタル庁が中心となり、デジタル技術を専門とする人材が行政機関の中で活躍できるようにするために、官民を越えた組織間で人材の交流を行います。図4 デジタル人材の育成・確保図版などデジタル庁 デジタル社会の実現に向けた重点計画政策のキーポイント8デジタル社会形成のために必要な箱と人の施策をまとめ2022

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