カレッジマネジメント237号
15/79

C O L U M N15日本の将来像において各大学は何を担うのかその主体的な改革の文脈に政策の動きやデータ等を取り入れてほしい総力特集 未来をつくるデジタル人材と教育 内閣官房の教育未来創造会議が2022年5月に公表した第一次提言が大学経営に与えたインパクトは大きかった。現在、その内容に即した様々な政策が進んでいる。改めて、提言の位置づけや内容について、髙見企画官にインタビューした。─教育未来創造会議はどのような位置づけの会議なのでしょうか。 教育未来創造会議は、日本の未来を担う人材を育成するために、高等教育をはじめとする教育の在り方や教育と社会の接続の多様化・柔軟化を進める方策を議論する場として2021年12月に立ち上げられました。会議の開催趣旨として「高等教育をはじめとする教育の在り方」「教育と社会との接続の多様化・柔軟化」と明記されているのがポイントで、教育と社会の接続に課題があったところをシームレスにしなければ、日本の国力は復活しないというのが問題意識の起点です。 しかし、社会で必要な資質・能力は高等教育だけで培われるわけではありませんから、初等教育段階から社会人教育まで議論のスコープを広く捉え、横断的に議論を進めています。─第一次提言の軸となるコンセプトは何でしょうか。 まずは「ウェルビーイングの実現」。即ち、多様な個々の幸せとともに、社会全体の豊かさがあるという考え方です。経済的な成長のみならず、精神的な豊かさや健康も含めた豊かな社会を目指すということでもあります。こうした社会を目指すために必要な方策として、「総合知」というアプローチも強調されています。 日本は少子化がより一層進むなか、成長分野の人材不足、理工系志向の低さが国際的に見ても際立っていますが、不確実な社会にあっては、「事実を客観的に捉えて自ら課題を設定内閣官房 教育未来創造会議担当室企画官 髙見英樹氏に聞くし、その解決を通して社会に対して価値をどう創出するのか」という思考が必須になります。また、人文・社会科学の厚みのある「知」の蓄積と、自然科学の「知」の融合により、文理の壁を越えて共に協働し、あらゆる分野の知見を総合的に活用しながら社会に貢献していくという考え方も重要です。─提言の内容を大学はどのように受け止めたらよいでしょうか。 提言のアジェンダは大きく3つあり(図3)、その1つ目として「未来を支える人材を育む大学等の機能強化」が掲げられていますが、成長分野への大学等の再編促進に関し、新たな基金の創設や規制緩和を通じて、各大学の改革を促進することとされています。 第一次提言の付属資料では、我が国や国際社会が現在どのような状況にあり、今後どのように変化していくのか等、様々なデータが示されています。大学経営者の方々には、このような資料も活用頂きながら、これからの社会を担う若者の育成機関として、今後の人材育成や大学教育がどうあるべきかを再確認して頂きたいと考えています。今回の提言は大学だけではなく、初等中等教育機関や地方公共団体、企業も含め、社会全体が変わらなければならないというメッセージが示されていますが、大学がそのなかで担う役割は極めて大きいことは言うまでもありません。国としてデジタル・グリーン等の成長分野をけん引する高度専門人材の育成に向けて新たな基金の創設をはじめとした環境整備は行われていきますが、最終的にどう動くかは個々の大学に委ねられており、あくまで「意欲ある大学の主体性を生かした取り組みを進める」ことが大前提。大学の自主性のもと、各大学の改革の文脈のなかで政策の動きを取り入れて頂きたいと考えています。リクルート カレッジマネジメント237 │Jul. - Sep. 2023教育未来創造会議 第一次提言の狙い

元のページ  ../index.html#15

このブックを見る