カレッジマネジメント237号
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5文理分断から文理融合へ生産年齢人口比率(%)人口(億人)20502045204020352030202520202015201020052000199519901985198019751970196518現在日本の大学は8割が私立大学であり、一部を除き文系や理系に分かれた学部構造になっている。これは大学だけの問題ではなく、高校段階で文理選択をする構造に問題があるとする向きもあるが、例えば文系学生はそれ以降一切サイエンスの学びに触れずに大人になり、社会に出てしまうのが常だ。合田氏は「そういう分断教育でサイエンスと全く離れていても生きていける社会構造自体が問題」と述べている。それによる弊害は色々あれど、今回の文脈においては、「日本の文系があまりにデジタル的思考法からかけ離れてしまい、普通科文系で国・英・社に集中したら大学、社会人とDXの思考法やサイエンスと生涯二度と交わることがない」点が大問題なのである。「自然言語で書かれた事象を、数学等の人工言語で抽象化するといったことができなければ、社会的価値創出に大きな支障をきたします。逆に言えば、それができる人材がもっと増えれば、1.41.21.00.80.60.40.20日本はよりワクワクした知的感動に満ちた、面白い国になれるのではないでしょうか」(合田氏)。デジタル的思考法、抽象化や構造化は理系に限った話ではないが、理系のほうが親和性が高いと見て、その領域の人材を増やすべく、現在理系転換のための議題や予算繰りが進んでおり、大きく注目を集めている。これは、現在大学経営のポートフォリオとして人文科学系が多いことがこうした文脈の障害となっているという現状に対して、その打ち手としての理数系学部の増加、また理系に進もうとする女性のキャップを外すべく取り組まれているものだ。しかし、理系学部だからこそのアプローチや人材育成は当然あるものの、理系でなければデジタル教育ができないということではない。文系学部が培う社会を見る視点こそが、課題発見には必要であり、社会に技術を実装するうえでキーとなる。つまり、どの大学も同じ「デジタル人材」という人物を育成するのではなく、「本学はどのようなデジタル人材を育成するのか」「そうした人材像に必要なスキルやコンピテンシーは何か」「その教育に最適な躯体は何か」を議論する必要がある。(%)50454035302520151050日本の競争力低下への懸念7065605550(年)5.8%17.9%28.5%23.6%8.3%20005.4%2020米国日本(出所) World Bank「World Development Indicators」、 OECD「The Long Game: Fiscal Outlooks to 2060 Underline Need for Structural Reform」より作成。「教育未来創造会議 第一次提言のポイント」より抜粋26.1%15.4%2.7%2060中国(年)図5 直視すべき日本の未来減り続ける生産年齢人口0〜14歳75〜84歳(出所) 国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(平成29年推計)」 より作成。将来人口の予測15〜64歳85歳以上65〜74歳生産年齢人口比率世界のGDPに占める各国の比率

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