カレッジマネジメント237号
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32GDS設置の背景にあった当時の状況への危機感1年次の6~7月に実施される海外英語研修の様子ここ数年、データサイエンスに関する学部・学科等を開設する大学が相次いでいる。2017年に開設された武蔵大学社会学部のグローバル・データサイエンスコース(GDS)はその先駆的存在だ。社会学部でデータサイエンスが学べること、英語教育をもう1つの柱としていること等、他大学と比べても独自色が強いGDSの狙いや教育内容について、社会学部学部長の粉川一郎氏、同学部メディア社会学科教授の庄司昌彦氏にお話を伺った。「GDS開設の背景にあったのは当時のデータサイエンスへの社会的な認識に対する危機感でした。データの利活用が社会的に活発になるなかで、データサイエンスの理系的な側面にばかり注目されているように感じたのです。しかし、データサイエンスは、まず何らかの解決するべき課題があり、それを解決するためにデータを集め、加工し、分析する学問です。このうち最も大事なのは課題を発見することであって、計算さえできればいいわけではありません。それに対して、私達社会学部では、社会課題に関する学びから、調査・分析に至るまで長年にわたって取り組んできています。この蓄積を活かしてデータサイエンス教育に関して独自の貢献ができるだろうと考えたのです」(粉川氏)社会学部ならではの強みはカリキュラムの面でも明らかだ。庄司教授は次のように説明する。「他大学のデータサイエンス学部・学科等とカリキュラムを比較すると、GDSの学生たちは『○○と社会』といった科目を非常に多く学んでいます。教育、ジェンダー等様々な社会課題を専門的に学ぶことで、社会に対する理解を深めることができるのは、社会学部だからこそといえるでしょう」また、コース名に“グローバル”と冠しているように、英語教育に力を入れていることも大きな特色の1つだ。「データを集めるときに、国内のデータしか利用できないのでは限界があります。世界中にあるデータにアクセスするためには、そこで尻込みしないよう基礎的な英語力を身につけておくことは非常に重要です」(粉川氏)英語に関しては、1年次の海外英語研修や2~3年次の英語を活用したボランティアやインターンのほか、英語のデータで分析を行うゼミも新たに始まっている。加えて、外部企業と連携した授業や企業インターンシップ等、実践的な教育が充実しているのも特色の1つだ。「例えば、コンサルティング会社のADKマーケティング・武蔵大学社会学部学部長・教授粉川一郎 氏メディア社会学科教授武蔵大学社会学部庄司昌彦 氏CASE2社会学×データサイエンス×英語で社会課題解決を担う人材を育成する武蔵大学社会学部グローバル・データサイエンスコース(GDS)

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