カレッジマネジメント237号
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33GDS卒業生に期待されるのは“編集者的役割”総力特集 未来をつくるデジタル人材と教育データ分析だけでなく、一連のプロセスを全て習得することが、企業等の現場で応用可能な実践力の基礎となる情報源 https://www.musashi.ac.jp/faculty/sociology/gds/ソリューションズと連携した授業では、実際のマーケティングデータを用いた商品やサービスの提案等も行います。企業インターンシップは長期にわたり企業の現場に入って学んだことを実践するプログラムです。即通用するほど甘くはないので、学生は打ちのめされて帰ってくることもありますが、その経験が成長につながり、卒業論文等に活かされています」(庄司氏)問題提起・考えるべき課題を設定する・理論的に仮説を立てるデータ収集データ分析提案なお、GDSでは、データサイエンスや英語等の専門的な教育は1,2年次に集中させ、3,4年次は、社会学部のGDS以外の学生とともに学ぶ機会を増やしているという。GDSの学生は学科内の様々なゼミに分散していく。「一般社会と同じ構図です。多様な学生がいるなかで、データサイエンスや英語という強みを活かしてどのような貢献や提案ができるかを自分で考えて研究に取り組んでいく。それによってデータサイエンスにとどまらない幅広い視野や協働する力が養われていきます」(粉川氏)一連の教育を通してGDSが育成を目指すのは、前述のように、社会課題の発見から、データ分析、それに基づく解決策の創出までを一気通貫で行うことができる人材だ(図1)。そのニーズは、特定の業界や職種に限定されるものではない。「DXが時代のキーワードになっているように、今や行政であれ大企業であれ中小企業であれ商店であれ、どのような組織においてもデータに基づいて変革が起こせる人材が求められています。私達も、データ分析だけが得意という人を育てようとは考えていません。GDS卒業後の人材像としてイメージしているのは、様々な組織で、問題を設定して、その問題を解決するための方法やチームをデザインできるような“編集者的役割を担う人”です」(庄司氏)開設から5年。すでに3回卒業生を送り出し、実際に幅広い業種にまたがる企業や省庁で活躍している。一方、GDSのこうした取り組みが企業や受験生にまだ十分に浸透していないことは今後の課題だという。「GDSの教育内容を企業の方に話すと、『まさにそういう人材を求めているんです』という声が返ってくるのですが、個別に説明しないとなかなか伝わらないのが実情です。また、受験生に関しては、社会学部ということで理系の生徒の選択肢に入りにくいという問題もあります」(粉川氏)データサイエンスに関する社会の理解も徐々に進んできているなか、状況に合わせてどのように広報や情報発信に取り組んでいくかが目下の課題だという。(文/伊藤敬太郎)図1 問題提起から提案まで、 全体をデザインできるスキルを磨く●社会的課題への好奇心と理解●社会学的発想力●クリティカル・シンキング・関連するデータを見つける・自らデータを収集する●社会調査法の習得●世の中のビッグデータ活用の理解・データから意味のあるパターンを見つけ出す・仮説のもっともらしさを吟味する●データ分析法の正しい理解と技術の習得●社会に対する好奇心・正しいストーリーを読み解く・相手に分りやすく伝える・解決策を提案する●データ分析と社会に対する正しい理解●コミュニケーション力

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