カレッジマネジメント237号
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35地方大学の活路としてのDX人材の育成学びの質・満足度の向上に向け、DXを加速させる総力特集 未来をつくるデジタル人材と教育的に学生にやってもらい、『データを解釈し、商品に落とし込む力』『働くときのマナー』『他者とのコミュニケーション』といった汎用的な能力を身につけてもらっています」。南九大がデジタルリテラシーを備えた人材育成に注力するのは、大学としての生き残り策であり、また、コロナ禍で全学を挙げて進めたDXを加速させる方針による。「教育内容に対する学生の満足度を高めることを第一の方針とし、必要な教育プログラムの構築や既存のプログラムの改善を図ってきました。その取り組みの一つが、各種事業への積極的な申請です」と中瀬学長は話す。とりわけ注力しているのが地域連携とDX人材の育成で、今回の事業だけでなく、2021年度から開始した独自の「数理・データサイエンス・AIリテラシープログラム」が、2022年8月に文部科学省「数理・データサイエンス・AI教育プログラム認定制度(リテラシーレベル)」に認定され、また、宮崎県内の3大学との共同事業「新しい価値を創造し持続可能な地域づくりを牽引する『多様な未来共創人材』の育成プログラム」も文部科学省「地域活性化人材育成事業~SPARC~」に採択されている。また、コロナ禍を契機に、2020年4月には約3週間でオンライン授業体制を構築し、学生支援に関する学内組織「アクセシビリティーセンター」を中心に聴覚障害のある学生向けにUDトークの導入も行ったこと等から、DXのさらなる推進を学園全体の方針として決定し、2021年4月にIR・DX推進室を設置。11月には、九州の大学で初めて全学にSlackを導入した。IR・DX推進室初代室長でもある吉本副学長は、「地方の小さな大学の生き残り策として残された選択肢は地域との連携とDXだと考え、DXに関しては、デジタルツールを日常的に使いこなせる学生を社会に輩出するという戦略でZoomやSlackの導入に取り組んできました」と話す。今後は全学におけるDXをさらに加速させていく方針で、「2024年度からの中期5カ年計画に教育DXを推進する基本計画を盛り込む検討を進めている」(中瀬学長)という。具体的には、学内ポータルサイトにて学習ポートフォリオを作成するシステムを構築し、GPAとディプロマ・ポリシーを組み合わせたグラフを学生個人のページに表示させるといった学習成果を見える化する取り組みや、Slackを用いた学長と教職員間、教職員と学生間のコミュニケーション強化等に着手する。「学生が予習・復習の時間を十分に確保できていない等の課題を解決するべく、これらの施策に取り組んでいきたい。デジタルツールを用いた教職員間コミュニケーションを強化することで、対面での会議時間を短縮し、学生の教育に掛ける時間を確保したい」と中瀬学長。南九大のさらなる挑戦に注目したい。地域の人流・群流データによる人の行動の調査。Wi-Fi(20 m、ビル内)、Bluetoothパケット(2m、接触)とビッグデータ解析のハイブリッドロケーションサービス※国立情報学研究所 曽根原登名誉教授支援(文/浅田夕香)DXプラットフォームには、各DXシステム(機器)からのデータを構築し、両大学の教職員や学生が自由に閲覧、使用することができると同時に、LMSと連動した共通カリキュラムなど学修データの構築を行うDXによるHACCP管理食品加工·衛生管理データ各機器で取得したデータDXによる食品開発技術食品分析データ人流・購買に応じた生産・加工の調整実社会(官公庁・民間企業)の協力による実データとDX化に準じた設備・カリキュラム構築と高度人材の育成南九州大学南九州大学/宮崎産業経営大学加工分析・マーケティング・流通教学管理システム●食品分析データ●食品加エデータ●人流・群流データ(マーケティングデータ)●購買履歴データ●ビッグデータ・Al解析データ●共通データベース●共通LMSダッシュボード●共通ポートフォリオ●共通カリキュラムフィードバック生産・分析に応じた物流・市場・広告の調整流通管理システム 市場管理システム 広告制作システム流通分析データ 市場分析データ 人流・購買者の計測と販売対策Wi-FiアクセスポイントBluetooth端末宮崎産業経営大学広告分析データ

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