カレッジマネジメント237号
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しまね産学官人材育成コンソーシアム島根大学 副学長 地域未来協創本部長松崎 貴 氏10年連続で人口減少66リクルート カレッジマネジメント237 │ Jul. - Sep. 2023島根県は鳥取県と並んで全国でも人口流出・高齢化の進み方が顕著な地域だ。島根県ではこれまでCOC事業、COC+事業を通じて、島根大学を中心に地方創生のための自治体・企業・経済団体を巻き込んだ協議体の構築と施策の実行を進めてきた。COC+ではその成果が高く評価され、S評価を得ている。2020年には、2019年度で終了したCOC+事業の取り組みを引き継ぐ形で「しまね産学官人材育成コンソーシアム」を発足(図1)。島根県の若者の人材育成と県内定着を目指すための施策をさらに推し進めている。人口流出・高齢化の「課題先進県」とも呼ばれる島根県の地方創生の取り組みとはどのようなものなのか。コンソーシアム事務局である島根大学の地域未来協創本部の本部長を務める松崎貴氏に話を伺った。島根県の地域としての最大の課題はやはり人口減少だ。県民数は1992年の77万人から、2021年は66万人まで減少。生産年齢人口も県民数と同年の比較で48万人から35万人になっており、働き手の不足による県内産業の量的・質的な影響も大きくなっている。人口減の大きな要因のひとつが高校卒業時点で県外に出ていく若い人材の多さだ。また高校卒業生のうち毎年約2700人が大学・短期大学に進学するが、県内の大学は島根大学、島根県立大学のみで、2校合わせても入学定員数は1600人。県内進学を希望する学生であっても必然的に県外に行かざるを得ないという構造的な問題もある。(図2)こういった現状の中、島根県では若者の県内定着を狙うだけでなく、県外に出ていった人材を流出したままにせず、のちに島根に戻ってくる人材に育てるという視点も持ちながら、手を打っていこうとしている。「流出・流入のギャップは島根県に限ったことではないと思いますが、我々は、若者が県外に出ていく前に島根の魅力をきちんと伝えることが大切だと考えています。島根には魅力的な働き口があり、魅力的な経営者がいる。そこで若者の力が求められていることを認識したうえで、彼らが武者修行で県外に出ていくのは必ずしも悪いことではない。しかし、島根のことを何も知らずに出ていってしまっては、なかなか戻ってこない」(松崎氏)こういった現状を変えるべく、しまね産学官人材育成コンソーシアムは自治体が深く関わっているのが特徴だ。もともとはCOC+の流れを引き継いだ形ではあるが、その背骨に当たるものが、島根県知事が掲げる「島根創生計画」だ。人口減少対策をどう打ち出していくかをメインテーマとし、「人口減少対策に打ち勝ち、笑顔で暮らせるしまね」というスローガンを立てている。産業を支える人材の育成に関しては、小中高大の教育機関、Uターン・Iターンしまね産学官人材育成コンソーシアム島根県の「人口減少に打ち勝つ」の旗の下、学生と地域・企業の「活気の好循環」を目指す地域連携で発展する大学 #7

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