カレッジマネジメント237号
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9②子ども達に個別最適化した文理横断的な学びをどう作っていくのかSociety 5.0に向けて取り組むべき教育政策の方向性として、①「公正に個別最適化された学び」を実現する多様な学習の機会と場の提供 ②基礎的読解力、数学的思考力等の基盤的な学力や情報活用能力を全ての児童生徒が習得 ③文理分断からの脱却 の3点が示された。これらを端的に表現すれば、「子ども達の学びのOSを変えていく」ということである。総力特集 未来をつくるデジタル人材と教育②「イノベーションの創出」の定義を改めたこと日本企業におけるDXの遅れが、2025年までに毎年最大12兆円もの経済損失になるとする「2025年の崖」を問題提起。DXの遅れの大きな要因として、「ITはシステム分野の話」「ITはコスト削減ツール」「DX人材がいないからDXできない」といった経営者の思考そのものを挙げ、デジタルを前提にしたビジネスを描くため、抽象化・レイヤー化といったデジタルの思考法を経営者が持てていないことに警鐘を鳴らし、企業行動の変容を促した。この法改正の意義は以下だ。①法の対象に「人文科学のみに係る科学技術」と「イノベーションの創出」を追加したこと これまでは経済的な価値に偏っていたが、イノベーションとは本来新結合であり、多様性のなかで異なるもの同士が結びついて、広く社会的な価値を生み出すものとされた。経済的価値から社会的価値への転換とは、GDPを生み出すクリエイティビティを高めるという方向性から、ディグニティ(尊厳)やフェアネス(公平性)の尊重、心理的安全性を高めて多様性を重んじるという方向性へと舵を切ったことと同義である。第6期基本計画はこの流れから始まる。新しい技術開発のみならず、人々の多様な幸せこそがイノベーションの素地となるという発想から、その視界を初等中等教育にも広げたことで話題になった。ここでは日本の将来像として「国民の安全と安心を確保する持続可能で強靭な社会」と「一人ひとりの多様な幸せが実現できる社会」の2つを挙げ、それぞれを構築したうえで日本の伝統的価値観を重ねてSociety 5.0を実現し、それを国際社会に発信し、世界の人材と投資を呼び込むとする内容が示されている。SDGsやウェルビーイングといった概念も、持続可能な社会を構築することと一人ひとりの多様な豊かさを実現することがイノベーションにつながるものとして、提起されている。また同時に、第6期では「総合知による社会の再設計」をうたう。既存の延長線上にない新たな社会を支える人材には、既存の硬直した学問スキームのみならず、学問間・社会と学術間を自在に横断・連携・融合できる企画・設計・推進力が必要である。そうした資質・能力は、前述した社会の多様化・強靭化・安定化のもと、一人ひとりが自らの問いを立てて探究できる環境でこそ培われるというわけだ。リクルート カレッジマネジメント237 │Jul. - Sep. 2023科学技術基本法改正→科学技術・イノベーション基本法内閣府CSTI 第6期科学技術・イノベーション基本計画政策のキーポイント3イノベーションの定義変更2020-2021政策のキーポイント4ウェルビーイングと総合知の提唱2021-2025

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