カレッジマネジメント238号
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ここまで説明してきた労働供給制約社会を都道府県別に分析すると、どのような傾向が見えてくるだろうか。地方経済の衰退は既に始まっており、生産労働人口の減少も地方ほど激しい。ただし、地域ごとに産業構造は異なり、2040年の労働力需給に関してもきめ細かく見ていく必要がある。図表4は、全都道府県の2030年と2040年の労働需給ギャップと不足率のシミュレーションだ。2030年に不足率が10%を超えているのは福島県、新潟県、京都府、兵庫県、徳島県、愛媛県の6府県で、15%を超えている府県はないが、2040年には34道府県が不足率10%を超え、北海道、山形県、茨城県、新潟県、長野県、京都府、徳島県、愛媛県の8道府県で30%を超えている。一方、富山県2.1%、和歌山県2.2%、島根県0.9%、香川県1.6%のように地方でも2040年時点での不足率が極めて低い県もある。特異なのは東京都で、2030年、2040年と労働需給ギャップのプラス幅、不足率のマイナス幅が拡大を続けている。この一連のシミュレーション結果はどのように解釈すればいいのだろうか。『未来予測2040』では、2040年までに東京都を除く各道府県がたどる道のりを4つのパターンに分類している。①2030年・2040年を通じて不足率が高く、早い段階から供給不足が顕在化し継続する地域新潟県、京都府、愛媛県、徳島県等がこれに該当する。いずれも直近の2020年代から生活維持サービスの担い手不足が始まり、2030年には不足率が10%を、2040年には30%を超えている。早い段階で問題が顕在化し、年々深刻度が増幅していくのが特徴だ。②2030年は比較的足りているが、2030年から2040年にかけて急速に供給不足が顕在化する地域北海道、宮城県、埼玉県、岡山県等がこれに該当する。2030年までの不足率はそこまで高くはないが、2030年代に急速に不足率が高まる。2040年代の不足率は20~30%で、一気に深刻なレベルに到達する。③2030年はやや不足しているが、 2030年から2040このように地方の危機とも結びついた労働供給制約社会を我々が乗り越えていくためには、どのような打ち手があるのだろうか。年にかけてその状態を維持する地域福島県、兵庫県、奈良県、宮崎県等がこれに該当する。2030年の段階で不足率10%と比較的高い水準に達しているが、その後の不足率の拡大はそれほど大きくはなく、2030年の供給不足が2040年にも維持される。労働力人口の減少、流出に伴う産業構造の変化がその要因で、労働力需要が縮小し続けるため、人口減のなかでも結果として不足率のバランスがとれてしまうパターンだ。④2030年・2040年を通じて比較的不足率が低く推移する地域島根県、香川県、富山県、和歌山県等がこれに該当する。2030年、2040年と不足率は数%にとどまる。この数字は決して楽観できるものではなく、需要の縮小が既に始まっているため、労働力人口が減少するなかでも需給バランスが均衡を保ち続けているに過ぎない。「このように道府県ごとに傾向に違いはあるものの、東京都を含む首都圏、大阪府以外の地域は深刻な状況に陥ることが予測されます。地方の中小企業は原材料高等の経営環境の変化に加え、事業継続のために売上をあげ利益を確保するために必要な働き手の数が獲得できず、“人手不足倒産”の問題に直面しています。東京都は生産年齢人口の流入が続けば比較的この問題は生じづらいですが、それでも決して人が余るわけではありません。日本全体で働き手が不足するのです。ただ、多くの地方の労働需給ギャップは特に深刻で、2040年に向けて不足率のマイナスが拡大していくことが想定されます。労働供給制約の社会課題は地方発の大きな課題なのです。年への意思決定11特集2040地域ごとの違いは?労働力が充足するのは東京都のみ。北海道、新潟県、京都府等は不足率30%超え

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