カレッジマネジメント238号
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1徹底した機械化・自動化による労働供給制約社会が訪れるなか、『未来予測2040』では四つの解決策を提示している。その一つが「徹底的な機械化・自動化」だ。AIやロボットをはじめとする省力化テクノロジーの研究開発・導入を進め、少ない人員でも多くのタスクを処理できるようにすることは、労働供給制約という問題に対する分かりやすい解の一つと言えるだろう。「私は、今後の日本の真の成長産業は省力化産業だと考えています。グローバルでもイノベーションを起こせる可能性が高いです。なぜならば、省力化を必要とする働き手が決定的に足りない現場が、労働供給制約の日本だからこそ圧倒的に増えていくからです。最新の技術が実装されることで、現場の問題を解決する。テクノロジーを生活維持サービスに実装していく省力化産業が、日本の強みのある分野になるでしょう」。一時期、AI・ロボットに人間の仕事が奪われるという議論が巻き起こったが、古屋氏は仕事がまるごとAI・ロボットに代替されることはほとんどないだろうと語る。「どのような仕事でも一つのタスクだけで成り立っているわけではありません。多くの仕事はいくつものタスクの組み合せです。AI・ロボットで代替されるのは一部のタスクに過ぎません。働く人達は他のタスクに時間と労力をかけられるようになりますし、人間にしかできない新しいタスクが生まれる可能性もあります。つまり、省力化テクノロジーの導入によって、仕事がなくなるのではなく、働き方が変わるのだと考えればいいのです」。人手不足が顕在化しつつある生活維持サービス産業では機械化・自動化に向けた研究開発が既に進んでいる。『未来予測2040』では、運輸、建設、介護、医療、販売、接客の6分野に関して次のような未来像を提示している。運輸:幹線輸送では、隊列走行や自動運転の実用化が進む。ドライバーは運転業務から解放され、車内で運送計画を立てる等別の作業ができるようになる。支線配送では、大規模マンションやオフィスビル等で部分的に自動配送ロボットが導入される。過疎地の配達に関してはドローンの導入が進み、人は監視業務がメインに。倉庫等の物流拠点は既に機械化・自動化が進んでおり、2040年ごろには業務の6~7割が自動化している可能性もある。建設:土木に関しては、自動化施工技術の進展で、1人の作業員が複数台の重機を操作できるようになる。建築工事は完全な自動化は難しいが、搬送ロボットや溶接ロボット、鉄筋結束ロボット等の導入により、作業員の負荷や人数を減らすことが可能になる。介護:介護記録業務はアプリによる自動記録が可能に。見守り・巡回業務も各種センサー等を活用したデジタル化が進む。直接介助の負担もロボットスーツや移乗サポートロボットにより減少。介護職員は利用者とのコミュニケーションにより多くの時間を割けるようになる。医療:今まで看護師が担っていた患者への入院説明や病院内の誘導、ストレッチャーでの搬送等はロボットで代替可能に。AI問診や、会議、カンファレンスのオンライン化等で事務仕事の効率化も進む。看護師は患者の全身状態の観察や評価を行う時間が増え、医療の質が高まる。販売:レジにおける会計業務は自動化が進む。商品の陳列・補充は完全な自動化は難しいが、人とロボットの協働が広がる。在庫管理等もデジタル化で効率化される。接客:ホテルやお店の予約やチェックイン・アウト、席への案内、会計等は早期にセルフ化、自動化が進む。配膳・下膳12省力化の推進が重要に問題解決の方向性機械化・自動化、ワーキッシュアクト、シニアの小さな活動、ムダの削減がキーワード

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