カレッジマネジメント238号
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2本業以外の「ワーキッシュアクト」が4企業における業務のムダの削減は待ったなしの急務3シニアの「小さな活動」をいかに拡大していけるかについても非接触型の配膳ロボットの導入が飲食チェーン店で既に進んでおり、今後も加速していく。「ワーキッシュアクト」とは、「Work-ish:何か社会に対して機能・作用をしているっぽい」「act:(本業の仕事以外の)様々な活動」を組み合せたワークス研究所による造語だ。今後の社会では、人は本業だけでなく、日常生活や趣味等の様々な場面で、社会に貢献できるという考え方を意味し、その普及・拡大が期待される。具体的には、スマホの位置情報ゲームを楽しみながら地域のインフラ点検に貢献する、旅行先で人手不足のなかでの農作物の収穫等誰かの困りごとをアクティビティとして楽しむ、ランニングやウォーキングをしながら地域を見守る防犯パトロールを行うといったことだ。ワーキッシュアクトは、これまでは「慈善活動」や「ボランティア」「コミュニティー活動」「副業」「趣味」「娯楽」と呼ばれてきた活動のなかで、結果として誰かの困りごとを助けているものの集合体と定義される。この際に重要なのは、娯楽や趣味などの本業以外の活動を、社会の誰かの助けにするためのプラットフォームづくりで、そうした仕組みや仕掛けをつくる人材へのニーズが高まるだろう。先述した「ランニングが防犯パトロールになる取り組み」では、参加している人はジムのルームランナーで走っているのと運動量自体は変わらない。しかし、「少し派手な揃いのTシャツを着て走る」という仕組みが編み出されたことで、同じ人間の活動が誰かを助けるものに転換されたのだ。ワークス研究所の調査では、現在何らかのワーキッシュアクトを実施している人は25.6%に上る。今後も高齢化が進んでいくなかで、一層重要になるのがシニアの活動だ。「人生100年時代」と言われ、既に定年後も働き続けることが一般的になりつつあるが、そうはいっても、シニアの誰もが現役時代と同じように負荷の高い仕事に取り組むというのは現実的ではない。そこで、『未来予測2040』では、シニアの「小さな活動」に注目している。具体的には預かり保育、パソコン教室の運営、機械部品の検査、介護施設の送迎、学童のティーチングアドバイザー等の「小さな仕事」と、小学生の通学案内、貸農園における野菜の栽培、高齢者の安否確認コーディネーター、趣味関連の動画の作成・配信等の「ワーキッシュアクト」がこれに該当する。こうした小さな仕事、小さな活動に携わるシニアは幸福度や生活満足度が高くなることも分かっている。外に出て体を動かすため、地域の人とつながりを作るためといった動機から、年齢や体力に応じた小さな活動に取り組むシニアが増えれば、労働供給制約という問題の解決策の一つになる。企業内では、今でもムダな業務が数多く行われている。経営者や就業者もムダを認識しているにも拘わらず、そのまま行われている業務も多い。このムダをどれだけ削減できるかは、労働供給制約社会において大きなテーマだ。『未来予測2040』では、経営者、組織長、就業者それぞれにムダがよくある業務についてヒアリングしている。経営者が挙げる上位2業務は「システムがない・古いことで、紙でやらざるを得ない業務・作業」「不必要に細かすぎたり、必要以上に高い品質を要求されたりする業務・作業」。組織長では「自分は必要性を感じないが、上司や関係者が必要だと言うので実施している業務・作業」「簡単な方法があるのに、わざわざ面倒だったり時間がかかる方法でやっている業務・作業」、就業者では、「システムがない・古いことで、紙でやらざるを得ない業務・作業」「簡単な方法があるのに、わざわざ面倒だったり時間がかかる方法でやっている業務・作業」が上位に挙がった。また、生活者への調査では、企業が良かれと思って提供しているサービスを不要とする意見もあったという。画期的なテクノロジーがなくても削減できるムダはいくらでもある。「今までこのようにやってきたから」というだけで続けられているムダな業務に関しては、徹底的な見直しが求められる。現在もムダな会議の削減等に取り組んでいる企業は増えているが、一層の取り組みが急務だ。年への意思決定13特集2040人々の困りごとを解消する

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