初・中等教育段階で文理が「未定」の女子に対するアプローチの必要性理数系教科の内容・教授方法にジェンダー視点を取り入れる研究を「2021年の『経済センサス-活動調査』において従業者数全体に占める女性の割合が50%を超える産業は『医療、福祉』『宿泊・飲食サービス業』『生活関連サービス・娯楽業』等の対人・ケア系で、『電気・ガス・熱供給・水道業』『建設業』『運輸・郵便業』『情報通信業』などのインフラ系は30%を下回っている。対人・ケア系の業種は有期雇用が多い傾向にあり、社会・経済に大きな変化があった際には失職しやすい。また、女性の正規雇用比率が25歳〜29歳をピーク(2022年は59.7%)に低下するLカーブ問題は深刻で、女性が経済的に自立しづらい状況になってしまっている」と河野氏。そして、こうした労働市場における女性をめぐる課題に対する大学の責任として、「大学及び大学院進学率における男女間の格差や専攻分野におけるジェンダー不均衡を背景に、大学が大卒労働市場に送り出す人材自体が偏っているために、大卒労働市場におけるジェンダー不均衡に加担してしまっており、労働市場を変えることができていない」と河野氏は指摘する。理系分野における女性学生の少なさも、この偏りの一因と言えるだろう。では、理系分野で活躍する女性を増やしていくにはどうすればいいのか。教育段階ごとに伺ったところ、まず、初・中等教育段階における課題として河野氏が挙げたのは「理数系科目を将来に生かそうと考えている女子が、男子よりも有意に少ないこと」であった。OECDの調査結果を見ると、数学的リテラシーや科学的リテラシーにおいて習熟度レベルの上位層に入っている日本の生徒のうち、「30歳で科学技術・学術分野の組織・男性標準の制度風土等の見直し・アンコンシャス・バイアス低減・ダイバーシティ・ステートメント科学技術・学術分野の景色・不平等の現状を可視化・ジェンダー統計の整備 定期刊行技術者や科学者として働いていることを期待している」のは、女子では約30人に1人と、男子の10人に1人に比べて少なく、さらに「ICT関係の職業に就くことを期待している」のは、男子が6%に対して女子は1%と、極めて低い状況にある。要因として「意識面に格差があることが諸研究から指摘されている」と河野氏は話す。「理工系の進路や職業は、主に男性が選択するものである」といった固定概念のある環境等が、女子を理工系の進路から遠ざけているわけだ。この点で、女子に対して理系の進路の魅力を伝えるような積極的な声かけや、ロールモデルの提示等の取り組みを行っていくことは「現時点では必要」と河野氏は話すが、現状の取り組みの問題点も指摘する。具体的には、提示するロールモデルが素晴らしすぎて「私には無理」と逆効果になってしまうケースがあることや、元々理系の進路への関心が高い児童・生徒にしかアプローチできないケースが多いこと等だ。「例えば、中学生女子の32%は、文理タイプの自覚が『どちらともいえない/わからない』という状態にあるが、その多くが高校で『文系』に変化していると読み取れる調査結果がある(※)。この『どちらでもない/わからない』という生徒達が理系を選択肢に考えられるようなアプローチの仕方を考えていかなければいけない」と河野氏。また、「欧米が70年代から取り組んでいるにも拘わらず、日本ではまだ取り組まれていない根本的な施策」として、「理数系教科の目的や教授内容、教授方法、評価方法にジェ景色3つのバランスが重要知識生産の全活動過程・対象や方法の選び方、評価・ジェンダード・イノベーションズ出典:河野銀子氏資料図2 男女共同参画推進のための三角モデル組織知識20
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