カレッジマネジメント238号
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地方の衰退大学間連携による技術研究と人材輩出ンを意識しているなか、国際競争を勝ち抜くために生産技術を革新し、今までの高コストな体質を変える必要に迫られています。最先端の生産技術の開発と、優れた生産技術者の育成によって、ものづくりの三要素といわれる『コスト』『品質』『納期』の向上を追求する体制づくりが急務になっています」こうした産業界の状況を背景に、岐阜県が先導して岐阜大学と岐阜に拠点を置く川崎重工業とナブテスコ等の企業が協力し、内閣府の「地方大学・地域産業創生交付金」(図1)と岐阜県の補助金を取得。発足させたのが「航空宇宙生産技術開発センター」だ。実はセンター長の小牧氏は川崎重工業の出身者。航空機製造の現場を知り尽くした経験からも、大学との連携は非常に意味があるものだと語る。「企業は生産技術の向上に力を入れていますが、AIやIoT等の活用が追い付いていない部分もある。大学も今変化を求められている。お互いが不得手の部分を協力しあい、大学の研究力がアップし、企業も研究成果を生かして産業振興につながるといったエコシステムを目指したい。さらに企業の研究開発費の数パーセントでも大学への研究アウトソーシング費になればさらにWin-Winの関係が築ける」また、人材育成の面でも大学への期待は大きい。「機械や電気、情報といったこれまで大学で学べる専門性に加えて、ものづくりの基本となる設計・生産・評価までの一連を経験し、『コスト』『品質』『納期』の意識といったマインドを学生の頃から持ってもらうと、企業に入ったときにスタートラインが大きく違ってくるでしょう」戦前から航空機設計の研究実績を持つ名古屋大学と、生産技術に特化した岐阜大学で、相互にいくつかの科目受講を必須にすることで、対立しがちな設計と生産の両方のマインドを理解した人材を育成し、産業界の期待に応える人材輩出を目指す。冒頭にも述べたように、現在、センターは岐阜大学と名古屋大学による東海国立大学機構の直轄で、地域航空宇宙産業との連携事業を展開している。発足当時の目的である「生産技術」の分野は岐阜大学が主体となり、名古屋大学は戦前から続く「航空機設計」の分野で航空宇宙産業を支える役割を担う。大学における事業の柱は企業のニーズに合わせた研究開発と人材育成だ。(図2)人材育成の施策としては、岐阜大学は「生産システムアーキテクトコース」、名古屋大学は「設計アーキテクトコース」を設置し、学部生3年、4年、大学院1年、2年の最長4年のプログラムを展開する。コースの策定では、両大学の教員が一緒にカリキュラムを設計し、単位互換等の制度を利用して相互に単位を取得できる仕組みを整えた。2つの大学が足並みを揃えて新しいコース制度を設計することは簡単なことではないが、ちょうど東海国立大学機構の発足というタイミングも功を奏した部分もあるようだ。コース内容としては、ものづくりの上流から下流まで一通り体験できるようなカリキュラムを目指している。生産技術と設計技術のカリキュラムで一部相互乗り入れの科目もあり、両大学の特徴を生かしながら航空宇宙産業が求める「設計・生産の両マインドを理解できる人材」の育成に応える工夫もされている。(図3)図3 「設計」と「生産」双方のマインドを理解できる人材の育成生産システムアーキテクトコース岐阜大学生産マインド教育生産マインド教育設計マインド教育航空宇宙研究教育拠点東海国立大学機構設計アーキテクトコース設計マインド教育年への意思決定29生産技術型人材育成プログラム航空宇宙生産技術システムアーキテクト人材育成プログラム航空宇宙設計・生産融合人材育成プログラム設計技術型人材育成プログラム特集2040名古屋大学02

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