地球環境の危機世界はカーボンニュートラル(脱炭素)・ネイチャーポジティブ経営へ脱炭素経営とは世界経済フォーラムは2023年1月11日、「グローバルリスク報告書2023年版」を刊行した。2006年から毎年発刊され、今回で第18版にあたる。1200名以上の世界の有識者・政策立案者・産業界のリーダーの見解をまとめたこの報告書によると、「今後10年間の深刻なグローバルリスク」として、「気候変動対策の失敗」と「異常気象」がトップ2を占め、第3位は「生物多様性の損失」だった(図3)。昨年は、11月に気候変動のCOP27がエジプト・シャルムエルシェイクで開催されたのみならず、12月には生物多様性のCOP15が開催され、2010年に採択された愛知目標を更新した「昆明・モントリオール生物多様性枠組」がまとまった。筆者は縁あって、気候変動のCOPには2005年にカナダ・モントリオールで行われたCOP11から毎年、生物多様性のCOPには昨年のCOP15に初めて参加している。気候変動のCOPには低炭素社会シナリオ研究の成果を、欧米やアジアの研究者や政策決定者と共に発表するために参加し始めた。当初は参加人数も少なく、最近のように政府・企業を含む関係機関パビリオンの増加・巨大化が起こるとは予想していなかった。初めて参加した生物多様性のCOP15も、気候変動のCOP27よりは素朴な雰囲気だっ1位2位3位4位5位6位7位8位9位10位(出所)World Economic Forum Global Risks Perception Survey 2021-2022たが、「Business Day」に世界有数のビジネスリーダーが登壇し、日本からも経済界のグループが30名規模のミッションを組んで参加する等、ビジネス界の関心の高さを肌で感じた。環境省は、脱炭素経営のことを「気候変動対策(≒脱炭素)の視点を織り込んだ企業経営」と定義し、企業の従来の気候変動対策はあくまでCSR活動の一環として行われることが多かったが、近年では気候変動対策を自社の経営上の重要課題と捉え、全社を挙げて取り組む企業が大企業を中心に増加している、と解説している(「グリーンバリューチェーンプラットフォーム」ホームページより:https://www.env.go.jp/earth/ondanka/supply_chain/gvc/decarbonization.html#no00)。ここで、出てくるキーワードが、TCFD(Taskforce on Climate-related Financial Disclosure)、SBT(Science Based Targets)、RE100(Renewable Energy 100)だ。グローバル企業を中心に、気候変動に対応した経営戦略の開示(TCFD)や脱炭素に向けた目標設定(SBT、RE100)をほぼ必須科目として実施していくことが国際的に拡大している。これは、グローバル投資家等に対して「わが社は脱炭素経営をちゃんとやってますよ」と示すた気候変動対策の失敗異常気象生物多様性の損失社会的一体性の逸失生計の危機感染症人間による自然破壊自然資源の危機債務危機地政学的対立図3 グローバル経済リーダーが指摘する「次の10年で世界レベルで最も深刻なリスク」年への意思決定35■経済 ■環境 ■地形学 ■社会学 ■技術次の10年で世界レベルで最も深刻なリスク特集204003
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