カレッジマネジメント238号
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大学はじめ高等教育機関に期待することめの見える化の重要な手段で、もはや大企業だけでなく、大企業とモノやサービスでつながっている中小企業も、Scope3(製品の原材料調達から製造、販売、消費、廃棄に至るまでの過程において排出される温室効果ガスの量(サプライチェーン排出量))という考え方に応じて、この取り組みから逃れられなくなってきている。日本企業で先進的に対応してきた企業の一つがキリングループだ。キリンは、京都議定書が採択された気候変動のCOP3の時点からGHG(温室効果ガス)排出量削減の目標をかかげ、SBT、RE100、TCFDにも対応してきた。また2022年7月には世界で最初に、TNFD(Taskforce on Nature-related Financial Disclosure)のパイロットケースを自社の環境報告書を通じて発表し、生物多様性のCOP15でも大きな関心を集めていた。TCFDに賛同する日本の企業は2023年3月末時点で1266機関で世界1位、SBTは400社で世界2位(アジア1位)、RE100は78社で世界2位(アジア1位)と健闘している(図4)。こういった企業の取り組みを知る機会として、筆者になじみがあるのは「エコプロダクツ展」(1999年開始)だ。今や「脱炭素経営EXPO」が開催される時代になっており、ご興味あれば参加されてはいかがだろうか。また、大企業に限らず中小企業や、学校・家庭・有志の方々が、脱炭素な社会・街づくりの構築に貢献している取り組み図4 脱炭素経営の世界的広がり(2023年3月31日時点)をコンテスト形式で紹介する「脱炭素チャレンジカップ」(https://www.zenkoku-net.org/datsutanso/)は、自らの取り組みを申し込むことができるほか、過去の取り組みを含め、全国での意欲的な取り組みをYoutube動画等により知ることができるユニークな活動だ。脱炭素チャレンジカップ2023グランプリを受賞された来ハトメ工業(創業1946年、埼玉県八潮町でコンデンサ用アルミケース・アルミ製リベットの製造、従業者数40名)の取り組みをお聞きする機会があったが、担当者自らが最新の知見を学び、毎週全社員向けに環境学習を行う等の継続により、環境改善、品質向上を実現してきた素晴らしい取り組みで、今も愚直に続けている様子に感服した。2020年6月5日の環境の日に、気候変動枠組み条約(UNFCCC)事務局は、「Race to Zero」キャンペーンを開始し、政府以外のアクター(非政府アクター)であるビジネス、都市、投資家、地域、そして高等教育機関に対して、遅くとも2050年までにゼロ排出実現をプレッジ(約束)するよう働きかけを始めている。2023年7月時点で日本の高等教育機関で本キャンペーンに入っているのは千葉商科大学と東京大学の2大学だけだが、世界では1173大学が関心表明を寄せ、既に534大学がコミットし、カバーする36

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