カレッジマネジメント238号
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地球環境の危機学生数は1100万人を超えている。その中でも米国の大学数が関心及びコミットで最も多く、トランプ政権下でも着々と気候変動教育を大学キャンパスという本拠地で実践する取り組みを進めていた様子が垣間見える(図5)。日本でも2021年7月に、大学や研究機関が国、自治体、企業、国内外の大学等との連携強化を通じ、カーボンニュートラルの実現に向けた機能や発信力を高める場として「カーボンニュートラル達成に貢献する大学等コアリション」(https://uccn2050.jp/)を、文部科学省、経済産業省及び環境省による先導のもと設立し、約200の大学等が参加している。弊所IGESも5つのワーキンググループ(WG)のうちの「地域ゼロカーボンWG」に主に参画している。気候変動や生物多様性、サステイナビリティに特にユースの関心が高まり、持続可能なまちづくり・社会づくり・世界づくりが求められるなか、世界で、そして地域で活躍できる人材を育てるための教育を行うためには、大学自らが学び成長する機能を備えることが、わが国が世界の中で役立ち続けるために大事なことなのではないだろうか。2008年に日本エネルギー学会誌のあとがきを書かせて頂いたときに「自然に憧れられる日本」というタイトルで、次のようなことを書いていた。・・・・・・「物静かに、しかし世の中をよくする(資源を過剰に収奪しない、周辺環境にあまり影響を与えない、人々の生活を豊かにする)サービスをいかに提供していけるかが、今後の日本人がとるべき道ではないか。それを日本全体だけでなく地域の場でも生真面目に行う。本気で取り組んでいる姿勢を静かに見せることで、今後さらなる成長が期待できるアジアの国々が進むべき次のステップ[日本型モデル:自然に憧れられる日本]を示すことができるのではないか。しんどい取り組みではあるが、そうやってかたち作る社会は比較的リスクを回避することができるだろうし、国際社会でもそれなりのプレゼンスを得られるだろう。そうすれば、少子高齢化しても、人々はそれなりに食えて、楽しい生活を送れるのではないだろうか。」残念ながら、特に気候変動やSDGs、生物多様性の国際会議に参加していると、今の日本・日本人は物静かすぎて、リーダーの後追いはできるが、自ら引っ張っていくような姿が見えず、世界での存在感自体が薄らいできているように感じることが多々あるが、一方で、ユースが自ら世界に出て声を上げている姿を見ると頼もしくも思う。一見異端児に見えるかも知れないが、瑞々しい感性を持つユースの活躍の場を広げ、後押ししていくのも高等教育機関や大人の役割ではないだろうか。何とか、彼らに見せられる背中を自らも作りたいものである。https://www.educationracetozero.org/current-signatories・・・・・・図5 Race to Zeroキャンペーンの高等教育機関部門で最も参加校が多いのは米国年への意思決定37特集204003

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