カレッジマネジメント238号
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どういう社会でどのように生きていくのかを再考するグリーン人材とは、自然科学の専門知識を持って多様な主体と協働・共創できる人材2022年1月2022年4月環境省と「地域脱酸素の推進に関する協力協定書」を締結→近畿エリアをはじめとした日本全国における地域脱酸素の実現に向け必要となる人材の育成を図る2023年6月3つのキャンパスで使用する全電力を再生可能エネルギー(再エネ)に切り2024年1月〜2013年より稼働していた龍谷ソーラーパークで発電した電力を大学キャンパスに供給できるように整備中(3キャンパス全体の約40%の電力を供給予定)Case Studies龍谷大学38龍谷大学(以下、龍大)は2022年1月に「龍谷大学カーボンニュートラル宣言」を発出し、国が目標とする2050年に先駆け、創立400周年を迎える2039年までにカーボンニュートラルを実現することを目標に掲げた。そのほか、図に示すようなカーボンニュートラルの動きを積極的に進めている。こうした動きを進める背景について、深尾昌峰副学長に伺った。深尾氏はまず、これまでの延長線上にない社会を冷静に見つめる必要性に言及する。「人類は産業革命で蒸気機関を発明して以降、技術によって豊かな生活を獲得してきました。しかし、現代の地球環境問題に照らして、従来のあり方を今後も続けることは人類の危機につながります。脱炭素は国際合意のもと政府主導で考えることというより、どういう社会を作ってどう生きていくのかという人の根本が問い直されていることでもあるのです」。必要なのは、今までの価値観や世界観を理解したうえでそれを疑い、新たな社会を構想し実現できる人材だ。「大学の知の還元、ではなく、地域社会の一員として、社会構造がこれだけ変わるなか、具体的な貢献をできるかどうかが問われれている」と深尾氏は強調する。また、龍大は浄土真宗の教えを建学の精神にする大学であ「龍谷大学カーボンニュートラル宣言」を発表→ 国が目標とする2050年に先駆け、創立400周年を迎える2039年までにカーボンニュートラルを実現することを目標とする替える。仏教は、「全ての物事は因果関係により成り立つので、無関係に独立して存在するものはない」という真理を示す。そのため、こうした現状についても「社会や世界は本来自然との関係性も含めて描かないといけない、人間が自然との関係性を無視して進めてきた結果が現在である」と捉える。どのような社会を目指し、どうすれば関係性を含めたリデザインができるか。2039年の400周年に向けた「龍谷大学基本構想400」において、その使命を図表2の通り定め、育成・輩出する学生が「社会変革の中核的担い手となる」ことを見据える。龍大にとって「大学として脱炭素を進める地域の拠点となること」「グリーン人材を育成すること」は特段振りかぶらなくても自然に為すべき使命であるのだ。「400周年に向けて大学の基本構想を策定するなかで、教育・研究・社会貢献という従来の役割に捕らわれず、社会変革に対して役割を担う大学でありたい、社会をより良くするハブになりたいと定めました」と深尾氏は話す。そのために重要となるのが、「社会の様々な主体と協働して目的に即した①どのような状況にあっても、他者を排除するのではなく受容し、 価値創造を通じて、人類や社会の発展のために貢献する。②人類全体の共存共栄と、地球環境と調和した社会の実現を目指した取り組みを行い、その知見を世界に広く発信し普及させていく。③異なる価値観を許容する未来を創出し、誰一人として取り残さない社会を形成していく変革の担い手を育む。副学長深尾昌峰 氏図表1 グリーンに関する近年の主な動き図表2 龍谷大学基本構想400を通じた使命協働・共創を軸に新たな地域創りを志向する人材育成

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