カレッジマネジメント238号
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日本の国際競争力低下大学研究力強化委員会多様で厚みのある研究大学群の形成総合振興パッケージでは、特定分野において世界トップレベルの研究を推進する機能や、産学官・地域連携による社会実装を担う機能等、それぞれの大学の強みを強化することとしている。さらに、大学の強みを核とした大学組織全体としての戦略的経営を後押しするとともに、大学共同利用機関や共同利用・共同研究拠点等がハブ機能を発揮することにより、大学や学問領域を超えた連携を拡大する等、我が国の研究力の厚みの更なる増大を図ることを目指している。令和4年度補正予算には、例えば、地域中核・特色ある研究大学の振興に2000億円が計上されている。「地域中核・特色ある研究大学強化促進事業」では、継続的に支援ができるよう、日本学術振興会に基金が造成され、地域の中核大学や研究の特定分野に強みを持つ大学が、その強みや特色のある研究力を核とした経営戦略の下、他大学との連携等を図りつつ、研究活動の国際展開や社会実装の加速等により研究力強化を図る環境整備を支援することにより、我が国全体の研究力の発展を牽引する研究大学群の形成を推進することを目的としている。第6期科学技術基本計画において、「大学の研究力を図るため、2021年度から、文部科学省における組織・体制の見直し・強化を進め、第6期基本計画期間中を通じて、国公私立大学の研究人材、資金、環境等に係る施策を戦略的かつ総合的に推進する」こととされたことを踏まえ、令和3年10月には、文部科学省に大学研究力強化室が設置されるとともに、科学技術・学術審議会の下に大学研究力強化委員会が新設された。委員会は原則公開で実施し、文部科学省のYouTube公式チャンネルでライブ配信をしている。「多様な研究大学群の形成」に向けて、大学の強みや特色を伸ばし、研究力や地域の中核としての機能を強化するうえで必要な取組や支援策等、幅広い観点から議論を重ねており、国際卓越研究大学の制度設計や総合振興パッケージの改定等にも反映された。現在、強化委員会では、総合振興パッケージの改定に際して示された羅針盤を踏まえ、各大学がそれぞれのビジョンの下、適切な研究マネジメント体制を構築し、研究環境を持続的に向上できるよう、必要な仕組み等を検討することとしている。強化委員会では、これまでにも、昨年度まで10年間実施してきた「研究大学強化促進事業」の事後評価で効果が実証された取組や、研究に専念できる環境を確保しつつ若手研究者を長期間支援する「創発的研究支援事業」における研究環境改善の好事例に加え、「科学技術の状況に係る総合的意識調査(NISTEP定点調査2022)」における大学研究力に関わる回答の状況や、「日本学術会議 若手アカデミー」の提言等も紹介されている。今後、“我が国の研究大学群のあるべき姿(研究大学100年構想)”に向けて、研究大学の備える要素の明確化や研究大学の状況・成長に合わせた支援の在り方等、我が国全体の研究力向上を牽引する研究システムをどのように構築していくか、必要な取組について議論を進めている。文部科学省として、運営費交付金や私学助成といった基盤的経費や科研費等の競争的研究費の確保に全力で取り組むとともに、関係府省や地方公共団体、産業界等とも連携・協働し、研究大学への変革に向けた挑戦を後押しするため、大学ファンドを通じた国際卓越研究大学への支援と、地域中核・特色ある研究大学への支援強化による両輪により、日本全体の研究力発展を牽引する多様で厚みのある研究大学群の形成に努めていく所存である。ビジョンは、アクションが伴うことで世界を変えることができる(Vision without action is merely a dream. Action without vision just passes the time. Vision with action can change the world.)。強化委員会では、大学の研究力を強化する実践例も紹介しており、海外の研究大学では、ステークホルダー、目指す姿、ビジョンが明確で学内に共有されていることや、採用ポリシーや評価システム、研究広報の見直しに取り組んでいることが指摘されている。社会変革を牽引する研究大学への期待が高まるなか、我が国の大学等における研究全体を俯瞰した政策の企画・立案、推進という、これまでの文部科学省では十分に担うことのできていなかった総合的な政策に関する機能を担うことができるよう、全国の国公私立大学の関係者との対話を重ねていきたい。年への意思決定45特集204004

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