1教育2研究3診療4社会貢献5大学運営大学で働く全ての人に明るい未来のビジョンをバックキャストと現実のギャップを埋めるけて議論した。ちょうど2020年度に大学認証評価を受けたばかりで、大学全体を俯瞰し、学内で最も大きい医学部の現状と課題が整理されていたことも、節目の良いタイミングだった。各作業部会では、医学部と産業保健学部の作業部会なら講師や准教授、研究所や病院の作業部会なら若手職員によって議論が行われた。上田学長は「経営層では年齢的に保守的で将来を想像できない部分もあるが、若手は20年後に自分達が幹部になっているという切実な思いがあるという意味で、この構成は良かった」と振り返る。長期ビジョンは、全体ビジョンと5つの分野別ビジョンで構成され、6年の第4次中期目標、単年度の事業計画に落とし込んだ。事業計画では毎年、各部署で達成度を確認してPDCAを回す段階で全学への共有・浸透を図っている。また長期ビジョンをきっかけに、第4次中期目標から初めて数値目標を入れ、長期ビジョンをどこまで達成できたかが全員で共有できるようにした。さらに長期ビジョンの策定は、途中のプロセスで内容を全学で情報共有し、学内外の意見を聞きながら進めた。「産業医大未来構想2040」というネーミングもアンケート投票で決めたが、「賛否両論あっても、全学的にすることで長期ビジョンをみんなで考える良い機会になった」と上田学長。ちなみに最初のたたき台には「差し障りない内容」など批判的な意見もあったようだが、上田学長はこうも語る。策定の目的・背景産業医科大学の目的・使命は、「医学及び看護学その他の医療保健技術に関する学問の教育及び研究を行い、労働環境と健康に関する分野におけるこれらの学問の振興と人材の育成に寄与する」旨、寄附行為及び学則に規定。産業医大未来構想2040 期間 2021.4〜2041.3産業医科大学は「産業医学の振興と優れた産業医・産業保健専門職の養成、質の向上」を目的とする我が国唯一の大学であり、大学病院は北九州医療圏で唯一の特定機能病院で、最大の病床数を誇る。本学は、このような特色や強みを活かし、永続的に発展していく。「産業医大未来構想2040」は、開学60年を超える20年後(2040年)の本学の到達点として、本学のあるべき姿・目指すべき姿を学内外に向けて示すものであり、働くすべての人々にとって、より良い未来を創造するための指標となるもの。全体ビジョン1 社会経済の構造変化に合わせ、課題を的確に把握し、社会から求められる大学、存在感のある大学とし2004年度から6か年毎に「中期目標・中期計画」を定め、目標を達成すべく取組を進めているが、本学で学び、働くすべての人々の将来と本学のより良い未来を創造するため、「長期ビジョン」を策定。て、本学の役割を認識し、永続的に発展する。2 本学の強みである産業医学・産業保健に関する知識・経験の蓄積を基盤とした教育、研究、診療の提供により、広く社会に貢献する。3 産業医学・産業保健と複数分野の協働により、産業医学・産業保健分野において、世界の中心的な学術拠点であり続ける。4 すべての教職員が、本学に所属することの誇りを持ち、次世代の産業医及び産業保健専門職の継続的養成を実践する。5 すべての働く人に産業医学・産業保健を届けるための、教育、研究、診療、社会貢献及び大学運営を行う。産業医大未来構想2040(概要)「長期ビジョンが目指したのは、本学で働く全ての人が、夢をもって働ける明るい未来を想像するための指標を示すことです。教員は限られた時間の中で教育、研究、臨床に取り組んでいます。医学教育改革はものすごいスピードで進んでいるので、教育と臨床に多くの時間を割かれ、どうしても研究が犠牲になる。将来に向けた夢のあるビジョンが欲しかったのです」。批判を受け止め、夢のある具体的なプランが必要だと次の一手に出た。それが大学運営の中の「UOEH ReBORN産業医科大学キャンパスマスタープラン2023」である。今年8月には5階建205床の急性期診療棟(Ⅰ期棟)が誕生、一般病棟(Ⅱ期棟)の計画も見据える。「その後に大学の校舎も新しく建て替える計画であることから、大学教職員、大学病院の教職員、医師、医療関係者にとってとても元気の出るプロジェクトとなっています」(上田学長)。「長期ビジョンを示し、中期目標・事業計画で積み上げていく方向性も作りました。ただ未来のありたい姿からのバックキャストで、毎年着々と取り組んでいっても、足りない部分とのギャップは生まれてくる」と上田学長は語る。このギャップが今の課題であり、それを埋めるべく、学長直轄の全学横断センター「高年齢労働者産業保健研究センター」「IR推進センター」を立ち上げ、課題解決に向けた検討を始めている。産業医学の第一人者である産業医科大学が、日本を明(文/能地泰代)るく元気にする未来に期待したい。 医学及び看護学その他の医療保健分野において、世界をリードする新たな知を創造し、医学・医療に貢献できる研究、産業医学とそれらの融合的研究を推進。更に、本学が産業医学研究の中心拠点となることを目指す。産業医学・産業保健を推進する教育機関、特定機能病院である大学病院と若松病院が共同して、地域社会における基幹病院としてあり続ける。今後の社会経済構造・疾病構造・就業構造の変化に対応した診療体制を構築。産業医学の知見を国内外に発信し、産業保健の活動を支援。更に、地域社会に信頼される医療機関として、地域の人々の健康増進を図る。本学の永続的な発展に向けて、進むべき方向性を大学構成員全員が共有。少子高齢化、技術革新、産業構造の変化、働き方の多様化及びグローバル化等の社会経済構造の変化に対応し、課題解決を図る大学運営を進める。分野別ビジョン社会の成長発展に寄与できる人材、高い倫理観、行動力を備えるなど、人間力のある人材を育成。世界の産業医学・産業保健をリードするプロフェッショナル人材を輩出。年への意思決定49特集2040
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