めています。ただいろいろな状況で動かせないものも少なからずあります。また学部の方針と大学全体の方針は常に個別最適、全体最適の違いがあり、調整は容易ではありません。大学のガバナンスというテーマともつながってきますが、企業のように上意下達とはいかず、学長のリーダーシップで説得し、納得して動いていくことが大事になると思います。花嶋 小野さんのお話を大きく頷きながら伺っていました。本学は関学さんより規模、人数共に少ないですが、1万8千人の学生がいて文理双方の学部がある総合大学という点では、学部の中への浸透が難しいのは同じです。将来構想については、実行計画で大きな計画を策定し、中期計画で5年間の計画に落とし込みし、それを基に毎年度の事業計画に反映しています。今年度の大学部門の事業計画の一つとして「教育の質の向上と多様な教育の展開」を掲げていますが、事業計画等の大学の方針を各学部に浸透させることは、なかなか容易ではないと思います。ですから小野さんのおっしゃるように、大学を引っ張っていくのはやはり学長のリーダーシップなのだと思います。法人全体は理事長、事務局のところは事務局長と、それぞれのトップがやり遂げるんだという強い意志をもって、何回も諦めずに言い続けることで、少しずつであっても動くのではないかと思っています。――将来構想を進めるには学長のリーダーシップが不可欠ということですが、学長には任期があります。小野 本学の場合、2014年に就任した村田が1期3年で3期(9年間)学長を務めました。2016年から将来構想の検討を始め、2018年に策定した中期総合経営計画を2022年度まで推進しましたので、自分で作ったものを自分で動かしていたわけです。2023年度から森 康俊新学長に体制が変わりました。理事会として「KGC2039」を進めることに変わりはなく、学長もそれを前提に動くことにはなりますが、ローリングのタイミングで調整・修正はしていくと思います。花嶋 本学は2008年に将来構想を策定した時に、将来構想を100周年に向けた神奈川大学の学園の羅針盤と位置づけて、20年後の神奈川大学が目指す将来像は、その間に理事長や学長が変わっても、本質的なところは変えないと決めました。そういった意味で、長期的な将来構想なり方向性を策定することには意味があるのではないかと思います。役員が変わるごとに大学の方向性や法人の方向性が変わるのは誰にとっても好ましくないことですし、一番には学生の成長、生徒の成長が共通項であるはずなので、そこに向かって進むという最終的な目標が一致していれば、皆さんの異論は出ないかと思います。――中・長期ビジョンを作るときには色々な作り方があると思いますが、どういった部署が将来構想を担っているのでしょうか。小野 教学面だけで中期計画を立てる大学が多いと思われますが、それでは予算や人員の不足を理由に法人側で計画を変更する等の齟齬が出てしまいます。やはり教学面と財政や人事、施設、情報等を連動してマネジメントする必要があり、総合的な知識とスキルを蓄積した専門の事務部門が必要になります。本学では組織改編を経て2016年に総合企画部が設置され、そうした役割を担っています。しかし、より重要なのは学長のリーダーシップです。このため、学長が副理事長と企画担当理事を兼ね、中期総合経営計画の教学面と財政・人事・建設計画を連動させ、教学と経営の一体化を進めました。それ以前は、各部署がそれぞれの価値基準に沿って動くため、どうしてもサイロ化が起きていたので、全体最適を進めるためには、学長の権限強化が必要でした。(現在、企画担当理事は学長ではなく、別の理事が担っている)――大学全体と学部の自治、教員と職員、経営層と現場と、多層化している大学組織の中で、先駆者としての苦労が見えます。神奈川大学ではどんな部署が担当されているのですか。年への意思決定57将来構想を担う組織とは?特集2040
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