カレッジマネジメント238号
68/108

●安心・安全まちづくり●ランドスケープデザイン●都市デザイン ●環境共生まちづくり ●建築設備●建築生産●保存・再生デザイン●インテリアデザイン●建築デザイン ●共生デザイン デジタルを前提とした社会に必要な工学教育の展開68リクルート カレッジマネジメント238 │Oct. - Dec. 2023計の分業プロセスや施工プロセスを疑似体験し、アクティブラーニング的にBIMや3Dシミュレーションの役割を実感することができる。デジタルで設計・制作に取り組むデジタルファブリケーションの工房も置く。また東京都新宿区の29階建て校舎における地震用加速度センサーを増強し、温湿度や風速、照度などの環境センサーを教室に設置。リアルデータを活用する。今回の事業採択を受けて、これら設備を導入した。「最近の学生はデジタルに関する授業を見ていても、サイバー空間を実際の空間と重ねることに抵抗がない。画面の中の3D空間を素直に立体で捉えている」と岩村氏は言う。「むしろベテランの方々のほうが、3D空間をリアルと捉えることが難しいことが多い」。業界課題を解決するための教育が、奇しくも世代に合った教育になっているということだろう。その一方で、3D画面の建造物が実際にどのような質量で手触りなのか、実物ではどうなるのかといったリアリティの感覚を埋める必要があるため、ファブの施設等も整えている。つまり、「デジタルツイン」とは、フィジカル空間とデジタル空間の双方と行き来しながら、シミュレーションと具現化を重ね合わせる空間なのである。工学院大学は2021年に文部科学省「数理・データサイエンス・AI教育プログラム認定制度(MDASH)」リテラシーレベルに、2022年には3学部(先進工学部、工学部、情報学部)が応用基礎レベルにそれぞれ採択されており、今回の事業3学科を横断する共通カリキュラム採択前から大学全体でデジタル教育には積極的に取り組んできた経緯がある。その間、建築学部は今回の採択事業に向けた検討を進めてきた。こうした動きは高校でプログラミング教育が必修化され、デジタル技術の素養を持つ学生の母数が増加することを踏まえ、これまで技術系中心だった学びが文系寄りの学生にも拡大していくことを見越している。建築学部は図の通り、1・2年次は3学科を横断する共通カリキュラムを中心に学ぶため、そこでデジタルツールに触れることで、各専門に分かれてからもベーススキルとしてデジタルがセットされた状態になるわけだ。岩村氏は、「建築学科だけではなく、まちづくり学科や建築デザイン学科の学生も含め、構造・環境・都市等、各専門における教育DXのコラボレーションを加速化させることになる」と期待を寄せる。また、「業界課題に対して外部の専門家を呼んで部分的に学ぼうとする大学はあっても、大学教育として体系的に教えることができる大学は少ないのでは」と工学院大学の優位性に触れる。工学院大学は、「事業・実務をリードし、21世紀型ものづくりを支える工科系人材育成」をミッションの一つとして掲げている。大学として、次世代エンジニアのスキルセットをチューニングしていこうという文脈に、今回の事業採択があるように思われる。これまでは入社後に教えるしかなかった業界からすれば待望の人材育成スキームと言えるのではないだろうか。こうした教育を受けた学生の今後の活躍にも注目したい。まちづくり学科建築学科●建築計画 ●建築構造 建築デザイン学科(文/鹿島 梓)図 建築学部のカリキュラム

元のページ  ../index.html#68

このブックを見る