建学の精神に基づく大学としての改革筋ティにデータからアプローチできるようになってほしい」と今泉氏はその意図を述べる。医療においてRWDを扱うことは決して容易ではないというが、総合研究所で連携している株式会社TISが健康産業領域でビジネス展開する会社であることがここでも活きている。間に立って調整を行ったのは瀬戸氏である。「データ分析自体においては、統計学やExcelのスキル等が必要です。そうしたテクニカルスキルはもちろん大事ですが、それよりもレセプトのデータを分析するときの切り口や、現場の観点からするとどう解釈できるかといったことを、データをもとに議論する場があることが大事だと思います」(瀬戸氏)。データはアプローチの一つであって、目的ではない。技術ありきの教育を新たに作るのではなく、もともとの教育にデータを組み入れることで、課題解決の解像度が上がっていくのである。最後に、こうした迅速な改革が可能な理由について、特に複数の事業採択を可能としている点について、大学としての独自性構築が起点である点のほかにどのようなポイントがあるのかを聞いた。今泉氏は、「補助金事業の趣旨と求められていることを食・栄養DXヘルスデータサイエンス食・栄養DXしっかりと読み解き、大学として目指す方向性と補助金事業のクロスするところを探す」と言う。補助金事業が目指す国としての方向性を理解したうえで、大学としてその方策を目指すことに学内のコンセンサスを得るには、「国が言っているから」だけでは足りず、ある種の正当性が必要になる。そうしたときに有効なのが、建学の精神を文脈に応じて解釈することだ。そこに整合すれば、大学としての方策と国の方向性がクロスし、経済的援助や社会的意義を得られた状態で改革を推進できるというわけだ。国の方策ありきなのではなく、あくまで大学としての改革筋ありきなのである(※)。本事業でTHCUが目指しているのは、産業界と連携したDXプロセス体験により、デジタル技術と医療産業に応用するデジタルマインドを醸成すること。そして、それが大学としての独自性になるという共通の像を掲げているからこその事業採択なのである。「社会ニーズがあり、競合が少なくて、建学の精神と整合するテーマを選ぶのが推進力のコツだと思います」と今泉氏は話した。食育※2023年度文部科学省「大学・高専機能強化支援事業」にも採択。医療保健学部・医療情報学科を再編し、工学を含めた複合領域として、新たに健康デジタル学科(仮)の開設を構想中。リクルート カレッジマネジメント238 │ Oct. - Dec. 2023(文/鹿島 梓)71
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