ドライバー不足で荷物の配達ができない地域が生じる、遅配が頻発する、災害で損傷した道路等のインフラがいつまでも復旧されない、工場の人員不足で生産が需要に追いつかず生活用品等の品不足が起きる、救急車を呼んでも受け入れてくれる病院がない、高齢者が必要な介護サービスを受けることができない…。もし、現状のまま何も有効な手が打たれなかったとしたら、これらの事態は全て現実のものとなっていく。私達が今まで当たり前に享受してきた日常生活を送ることができなくなってしまうということだ。「物流や介護、建設等の分野では現在でも人手不足。ギリギリでサービスを維持している状況です。一方で人口動態を見ると、日本の生産年齢人口の人口全体に占める割合は、1990年代から25年程度かけて、70%から60%に低下しました。現在は横這いの状況ですが、2025年から10年間かけて50%前後に低下して二番底を迎えます。このように生産年齢人口が全体の50%になるという事態を今まで人類は経験したことがありません。そうなったときに、前述のような生活維持サービスはどうなってしまうのか。これは極めて深刻な問題だと言わざるをえません」。では、生活維持サービスに関わる7職種と事務・技術職について、2040年までの労働力の需給バランスがどのように推移していくのかを見ていこう。「輸送・機械運転・運搬」「建設」「生産工程」「商品販売」「介護サービス」「接客給仕・飲食物調理」「保健医療専門職」の生活維持サービス7分類に「事務、技術者、専門職」を加えた計8分類のシミュレーション結果を示したのが図表3だ。供給が需要に追いつかず、徐々に不足率が拡大していくのは全ての職種に共通しているが、2040年時点での不足率の大きさには職種ごとに違いが見られる。「輸送・機械運転・運搬」職種では、需要は2040年まで横這いの状況が続く一方で、供給は右肩下がりに減少していく。2030年時点でも需要409.0万人に対して供給371.1万人となる予測だが、2040年には需要413.2万人に対して供給は313.4万人。不足率は24.2%に達する。「建設」職種では、需要は漸増を続け、2040年には298.9万人に達する一方、供給は加速度的に減少を続け、2040年には233.2万人。不足率は22.0%と予測されている。工場労働者等の「生産工程」職種に関しては、2023年現在から3年間は供給が需要を上回るが、2027年を境に供給不足が始まる。需要がほぼ横這いのなか、供給は下がり続け、2040年には需要845.0万人、供給732.6万人で不足率は13.3%となる。「商品販売」職種では、需要は横這いで、2040年には438.5万人が必要とされるが、供給は329.7万人にまで減少。108.9万人の供給不足で、不足率は24.8%となる。「介護サービス」職種は、高齢化を背景として今後も需要が伸び続けるのが大きな特徴。2030年の需要は現在から10万人以上多い199.0万人に、2040年には229.7万人に達する。供給減少のペースは他職種ほど激しくはないものの、不足率は25.3%に達してしまう。「接客給仕・飲食物調理」職種では、需要は漸増を続け、2040年時点で、374.8万人が必要とされるのに対し、供給は318.1万人。不足率は15.1%だ。「保健医療専門職」も、介護サービスと同様、今後も需要が増え続ける。2040年時点の需要467.6万人に対して、供給は386.0万人。不足率は17.5%となる。なお、「事務、技術者、専門職」でも供給不足は起きるが2040年時点の不足率は6.8%にとどまる。これと比較すると、前述の生活維持サービス7分類の不足率がいかに高いかが分かる。特に深刻なのが、「介護サービス」「商品販売」「輸送・機械運転・運搬」だ。年への意思決定9特集2040労働力需給はどうなる?生活維持サービス全般、なかでも介護サービス、輸送・機械運転・運搬、販売が深刻な供給不足に
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