2 20――小川さんは昨年、民間企業から梅花学園の理事長に就任されましたが、学校法人の経営は民間と比べてどのような点に違いがありますか。小川 私は阪神阪急ホールディングスでエンターテインメントに関わってきまして、事業運営と経営を一体で担う経験をしてきました。2015年に梅花学園の小坂 賢一郎前理事長から「梅花女子大学に新たに梅花歌劇団を設立したい」とご相談を頂いたことからご縁が始まり、2021年に学外理事となり、2023年7月に理事長に就任しました。学校法人の経営に入ってみて、寄附行為等の文言含め民間とは勘定科目が全然違うので、利益や剰余金がいくらでどれだけ投資できるのかが最初は分かりませんでした。漸く慣れてきたものの、民間に比べ非常に難しいと感じる点が多いです。例えばエンターテインメントの企業の場合、コロナ禍で観客が劇場に来られないならライブ配信等新事業を展開するといった経営の多角化ができました。しかし学校経営はほぼ授業料収入のみで、選択肢が少ない。しかし、学校としてやるべきは、マーケットが縮小していくなかでもどうやって学生を集めるか、そのために中身と個性を伸ばしてどう勝ち抜くかというシンプルなこと。まさに今が関ケ原なんだと思います。そんななか、井原さんが実行された実践女子学園の改革を知り、私がやるべきことを教えて頂いた気がしました。やはり先を見据えて10年ピッチで考えなければダメだと思い、まずは5年先に生き残るために、2028年の創立150周年に向けた新ビジョンを策定しました。――実践女子学園のお話が出ましたが、井原さんは3つの法人を通じて、これまで経営においてどんなことに注力されてきたのでしょうか。井原 現在の白梅学園では、まず今までのダメだったところを全部ひっくり返してやり直しているという段階です。先生方は「白梅は学生と教員の距離が近くてアットホームな雰囲気が良いところです」と言われますが、経営というシビアな観点から言えば、正直生ぬるい。問題が起きても先送りしてしまい、誰も手を付けないまま忘れてしまうことが往々にしてある。2022年に創立80周年を迎えましたが、これまで賃金を下げたことは一度もなくて、私が就任半年後に財政再建策として、3年かけてボーナス1.5カ月カットを掲げたらみんなたまげてしまいました。財政再建策を打ち出した理由はその時の校舎が築54(現在は築59)年にもなっており、建て替えが必要でしたがその資金が2億円しかなかったからです。実は実践の渋谷キャンパス開設も、予算が足らない分をボーナス1.0カ月カット(5年間かけて)で実現しました。今から10数年前になりますが、当時の教職員に「5年、10年、20年先にこのまま日野の地でやっていて、実践女子大学は生き残れますか」と聞いて回りました。すると意識の高い人達は「5年は持つ、10年もまだ存在するんじゃないか、でも20年と言われたらちょっと危ないんじゃないか」と言うのです。だったら渋谷に戻ろうと、総工費90億円、18階建ての新校舎を建てました。渋谷キャンパスを見た女子高生達は「この大学で学びたい」と目を輝かせていました。小さな大学にとって、教学と法人の一体的運営は、生き残るためのキーワード。グランドデザイン策定を、みんなの力で。(井原)大学経営どこに注力をしてきたか
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