21経営者の最大の役割として、良いところは踏襲すればいいですが、いざという時には今までの悪いところをひっくり返せるぐらいの腕力を発揮しなければいけません。それまで実践はずっと教員が理事長をしてきました。教員は研究者としては尊重できますが、経営は素人です。その点、小川先生は経営のプロとして学校法人の経営を学ぼうと奮闘されていますし、濱名さんもオーナー系理事長なのでトップダウンがしやすいのではないですか。――日本の学校法人はざっくりと3分の1が宗教系、3分の1がオーナー系、3分の1がそれ以外に分けられるなかで、濱名さんはオーナー系と言われるポジションになると思うのですが、どんなことに注力されてきたのでしょうか。濱名 私のこの市場におけるプレゼンスは、高等教育研究と経営の両方をやっている人間であるというポジションだと思います。オーナー系私学だと楽に決められるだろうと思われる部分は確かにないわけではないですが、だからこそ心がけてきたことが2つあります。1つ目は、本学のような後発の学校は、教育力を高めて学修成果を可視化していかなければいけないということです。これを1つの大きな柱として、研修と評価の強化を大切にしてきました。まず研修について、本学ではプロフェッショナルデベロップメント(PD)と呼ぶ研修を、1年に3回(8・9・2月)開催しています。8月に問題発見、9月にその答え、2月に次年度に向けた確認をテーマに、丸1日から2日かけて議論を行い、学生オブザーバーからコメントをもらうという内容です。評価については、学生の教育評価にはGPのみならずルーブリックで定性的評価による可視化を行い、教職員の評価には目標管理制度による評価の可視化を行っています。つまりオーナーだからこそ、納得性を高めるための可視化をかなり意識して、「組織的な仕組み」でマネジメントすることを心がけてきました。早期にルーブリックを導入できたのは高等教育研究という自分のバックグラウンドがあったからです。もう1つは、中小規模の大学にとって大事なのがネットワークの構築・活用です。これまで「(社)大学コンソーシアムひょうご神戸」や「(社)学修評価・教育開発協議会」といった大学連携推進法人を立ち上げてきました。特に後者では、他の地域の5つの中規模大学でネットワークを作り、情報交換やノウハウを活用しています。また兵庫の大学として、全学部で防災士の資格を取れる安心・安全教育の強みを海外展開すべく、東南アジアの大学と「ACPコンソーシアム」を立ち上げました。文部科学省「大学の世界展開力強化事業」を2カ年にわたり獲得できたのも、自分達の規模や人材の少なさをカバーしようと構築してきた国内外のネットワークに助けられた成果です。――梅花女子大学は、「美しく、梅花女子」のキャッチや「チャレンジ&エレガンス」のスローガン等、特徴的な方向性を示されていますね。小川 前理事長のもと、女子大学としての個性に打ち出す改革で、入学者数のV字回復を実現してきました。しかし、理事長に就任してから各学校を回ると、茨木の大学施設はきれいですが、中高は発祥の梅田から豊中に移転して100周年を迎えようというなか、シンボルの円形校舎も老朽化していました。やはり、女子学園の学び舎は絶対に楽しく、きれいでないといけない。剰余金を聞いたのはそのための予算がいくらあるのかと考えたわけで、その一部を設備投資に回せばいいのです。そのうえで、一人ひとりの学生を見て心根の美しい人を育てたいと考えています。本学は小規模な大学ですが、そういう人を1人でも多く育てるのが我々の建学の精神であり、その部分だけは譲らずに経営者が努力していかないとだめだと思うのです。2024年4月からは中身の学びも変えます。「目指すは、仕事力のある真におしゃれな女性」をキャッチに、主専攻×副専攻×教養科目の掛け合わせで、第1特集●理事長の視界から考える 法人経営の課題
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