カレッジマネジメント239号
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4 23バルマインドを育てていくことが最大の課題だと思っています。――小川さんは創立記念日の1月18日に新ビジョンを発表されると伺いました。 小川 我々は2028年に学園全体で創立150周年を迎えます。今まさに梅花学園リニューアル部会を設定して取り組んでいるところですが、こういう作業は経営の経験を積んでいるので、組織をこうしよう、予算は5年で毎年6億ずつの30億円を投資しよう等と指示をしながら進めています。ただ会社なら本部長が「これをやろう」と言えば全社を挙げて実行するのですが、学校は学生と直接向き合う教員に協力を仰ぎ、動いてもらう必要がある。そこで中高の先生にアンケートを投げ掛けて、リニューアルで学校に望むものは何かといった意見をもらっています。熱意ある教員の共感を得て、原点である教育「学び舎は楽しく美しく」の実現に向けて、教員と経営側の考えのベクトルを合わせて戦っていこうとしています。――今回の調査結果は、「重要度が高い課題は多いが、緊急度は低い」というのが全体の傾向でした。しかし皆さんのお話を伺っていると、今が重要なターニングポイントのように感じます。そこで、これからの経営に必要な視点とは何かをお聞かせ下さい。 井原 小川さんの「心根の美しい人を育てるという建学の精神だけは譲りたくない」という言葉に、芯の強さを感じました。白梅学園は短大を徐々に共学化して、2005年には短大に加えて4年制大学を設置しました。現在男子が2割在籍していますが、学問領域は子ども学と保育ということもあり、男子が大幅に増えるような予測は立てていません。しかし、幼保はAIにとって代わられる職種ではないと捉えています。ですから私はグランドデザイン策定会議で、拡大拡張はなくむしろコンパクト化し、学問領域も既存の子ども学で勝負するという意向を伝えています。女子大にとって共学化の議論は避けられない問題です。実践でも共学化の話は出ましたが、実践は下田歌子という学祖が、「女性のゆりかごをゆらす手が世界を動かす」と女性を鼓舞する理念を持って設立した学校です。私学にとって建学の精神は大切であり、私は共学化するくらいなら一旦解散して法人を変えるぐらいの覚悟を持って経営すべきだと主張し、共学化はしませんでした。だから建学の理念が違う学校を一緒にして新ミッションを作るなんてことをやり遂げた濱名さんはよくやられたなと感心しています。濱名 本学院は神戸に進出してグローバルに展開するなら、少なくともダイバーシティとグローバル化をセットに、新たな展開を考えざるを得ないと思っています。本学院は来年で創立100周年になります。これを転機に次の世紀に向けて経営に何が必要かと考えた時、教育ミッションの実体化が我々の生きる道だと思っています。ミッションの3つのCが目指すものは、「視野の拡大」と「認識の共有」です。これを教職員と学生がどう実現していくかというと、先ほどの経験学習なんだと思います。そのための海外とのネットワークや留学生の国内留学等も今考えていて、2024年度から「外国ルーツを持つ学生」を積極的に受け入れる入試制度と奨学金制度を始めたのもその1第1特集●理事長の視界から考える 法人経営の課題オーナー経営者だからこそ、納得性を高めるための可視化と組織的な仕組みでマネジメントを。(濱名)今後の大学経営者にとって必要な視点とは何か

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