カレッジマネジメント239号
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24つです。そういう方たちがいるという認識の共有と、コミュニケーションを通じた視野の拡大が、学生や生徒だけではなく教職員にも必要だと考えたからです。そういう点で、100周年を1つの節目として、これまでお話ししたような内容の新ビジョンを策定し、2024年の9月の100周年記念式典で打ち出そうとしています。――文部科学省も人口が減少するなかで大学のリソースを共有していこうということで、連携や統合を大きく打ち出しています。そのなかでいち早く学部譲渡という新しいスキームを使われた理事長として、連携・統合を考えるうえでどのようなメッセージを送りたいですか。濱名 やはり思っている以上に大変だということです。それとデューデリジェンスを元にシビアな現状分析を共有していかないとだめだと思いました。旧山手は、合併前に校舎のメインテナンスを計画的に行えていませんでした。また中高は無借金だったのですが、校舎をノーケアでやってきたからです。痛んでいる箇所に手を入れるとかなり費用はかかりますが、今日お二人の話を聞いて、決断・実行しなければいけないと分かってはいるけれど後回しにしているようなことは、早くやっていかなければいけないと改めて教えて頂きました。それから連携についても、(一社)学修評価・教育開発協議会は“スープの冷める距離連携”という表現をするのですが、近隣の学生募集の競合校とはできることとできないことがあるので、文部科学省にはそこについてもう少し考えてもらわないといけないと感じます。――連携・合併は言うは易しですが、実際に行うのは経営として乗り越えるべき壁が非常に多いということですね。最近は企業経営者が大学の理事長になられることも多いですが、小川さんから皆さんにメッセージをお願いできますか。小川 やはり学校経営ははっきり言って企業より大変だということは言いたいですね。でもやるからには、やはり聖職ですから、学生や生徒のことに関して、どれだけ愛情を持って接することができるかです。人1人の人生を決めるのですから、そこは大事にしたいと思います。梅花学園は、阪急沿線にある女子学園です。私は阪急に育てて頂いたので、阪急沿線の街は安全安心で、文化がないとダメだと考えています。そして女子大というのは街の文化を担う存在です。これから梅田を大改装していくので、我々は小さな女子大、女子高ですけれども、女性が持つ高いポテンシャルで沿線の地域を盛り上げたいと思います。そのために私にできることは、今までの企業経営で教えて頂いたものを学校経営に役立てることです。それは何かと言えば、やはり一番の根幹はしっかりと財務状況を把握しながら、先を見据えた次の投資を考え戦っていくことです。そして梅花を良い学校にしていこうという思いを、しっかりと全職員、先生に対してご理解頂き実行する、その実践あるのみだと思っています。井原 企業から来られた小川さんとは感覚が違うかもしれませんが、大学にどっぷり浸かってきた者として申し上げたいことがあります。私は55年間、大学職員と経営者をやってきたので、プロパーの職員も企業からの転身者もたくさん見てきました。そこで良い点、悪い点が見えてきたのですが、企業出身者の悪い点は、大学の生ぬるい文化風土を「だから職員はだめなんだ」と言葉に出して馬鹿にしてしまうところです。反対に大学職員の悪い点は企業に学ばないところです。小川さんもご覧になると分かりますが、納期を確認して仕事をする職員はほとんどいません。納期の確認がないから段取りも取らないわけで、達成水準の感覚が抜けている。コストの感覚も非常に低いです。だから私は、職員を鍛え上げて質を高め、戦士にするこ財務状況を把握しながら、先を見据えた次の投資を考え戦う。そして、良い学校にしていく思いを全教職員に伝え、実践するのみ。(小川)

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