カレッジマネジメント239号
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Ⅰ学校法人全体の経営状況は26寄稿適切な収支が得られているか(図1)適切な資産を有しているか(図2)学校法人の財務の状況は、様々な分析手法があり、事業団でも『今日の私学財政』にて分析しているが、経営が健全であるかは、尽きるところ、「適切な収支が得られているか」「適切な資産を有しているか」ということになる。適切な収支を得ているか否かは、「事業活動収支計算書」の「経常収支差額比率」で確認する。これは、教育活動その他、学校の経常的な活動の収支を把握するもので、プラスであればいわゆる黒字、マイナスであれば赤字ということになる。2021年度決算では私立大学の1/3にあたる202校がマイナスである。②補正後経常収支差額比率経常収支差額の計算には現金の支出を伴わない減価償却額が含まれているので、この額を除いて計算したのが「補正後経常収支差額比率」である。これがマイナスの場合は法人から現金が流出していることになる。補正後経常収支差額比率がマイナスで推移し、やがて現金が尽きれば、いわゆる資金ショートとなってしまう。また、将来の施設の更新等のために資金を準備する必要がある。資産のうち現金化可能な金融資産をどれだけ有しているかは日本私立学校振興・共済事業団私学経営情報センター経営支援室長①経常収支差額比率Contribution私学を取り巻く経営環境が悪化するなか、各学校法人が早期に自らの経営上の問題点を把握し、その解決に積極的に取り組むために、事業団では経営改善計画の立案・実施を支援している。事業団webサイトでも公表している『学校法人の経営改善等のためのハンドブック(以下『ハンドブック』)』や『経営改善計画立案・実施のための参考資料(以下『参考資料』)』等から作成上のポイントを紹介したい。計画の作成に触れる前に、学校法人、ここでは大学を例に、その前提となる経営環境等を確認しておきたい。大学の主たる入学者である18歳の人口は1992年の205万人を頂点として急速に減少し、現在は110万人前後のいわゆる踊り場であり、今後も一層の減少が見込まれている。事業団では、毎年5月1日現在の入学者等の状況を『私立大学・短期大学等入学志願動向』として集計し、公表している。2023(令和5)年度の入学定員未充足の私立大学の割合は53.3%となり、調査開始以来初めて50%を超えたほか、私立大学全体の入学定員充足率は2年ぶりに100%を下回り、99.6%になった。1.少子化の進展と私立大学への入学志願動向どうなっているのか2.財務の状況はどうなっているのか三島木 武学校法人の経営改善計画今後に向けた作成の要点

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