カレッジマネジメント239号
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Ⅲ経営改善計画の進め方と28見を広く収集し、いわゆるSWOT分析等の手法を通じて議論を進めていくことで、自法人への理解の促進、危機感の醸成・共有、戦略の明確化等が期待できる。事業団では、教育研究活動のキャッシュフローの動向や外部負債・運用資産の状況により、学校法人が自身で経営悪化の兆候を発見・認識することが可能な「経営判断指標」、財務比率等の数値データと学校法人の管理運営等上のポイントからなる『自己診断チェックリスト』を公表している。そして、この分析の段階で、今後5年程度(余力があれば10年程度)の収支シミュレーションを作成し、どのような収支になるのか把握しておきたい。分析後は、それをもとに計画を策定する運びとなるが、経営陣と全教職員で分析結果や自法人の状況、問題意識を共有することが大事である。特に問題点については丁寧に説明する必要である。現場に存在する問題点を解決し、良い点を強化するには、現場の教職員の努力が不可欠となるからである。また、理解を深めるためにも経営陣・教職員問わず、研修や説明の機会は欠かせない。学校法人が多様なリスクに対応しながら、学校を永続させていくためには、財務状況、学生募集等で独自の戦略を練り、実行していく必要があるが、それぞれの戦略をより有機的に結びつけ機能させる計画の策定が不可欠である。計画策定にかかる実施体制として、改善すべき問題ごとにチームを設置する「プロジェクトチーム(委員会)方式」や「第三者(専門家)委員会方式」等が挙げられる。チームを理事会に直結させることや、経営に対して権限のある者をメンバーに入れるなどして、実効性を担保する必要がある。分析の段階から携わっている者や若手、そして経営陣や各部署からの意向を調整できるメンバーを含むチームであることがポイントである。また、教職員が当事者意識を持ち、言いづらいことも発言し議論できる環境が欠かせない。さらに、理事長をはじめ経営陣で構成される理事会等の場に、教職員も加わって議論する場面をつくることも考えられる。学外から来た理事を含め、現在の学校の状況を経営陣が把握し、全教職員が一丸となるには、細かなことも共有し、議論していくことが重要である。経営改善計画の策定に当たっては、建学の精神、教育理念を再確認し、学校として目指すべき方向性や経営ビジョンを確立することになる。(図3)経営ビジョンを達成するためには、戦略が必要となるが、その検討では、先ほどのSWOT分析等を活用できる。また、地域(住民、企業、自治体、高校等)の協力を得るためには、具体的な将来像や実行プランを示さねばならない。それらをもとに、他校での例や外部機関・人材への相談内容等も参考にして、教学改革、学生数・学生募集、学納金・外部資金等の収入、人事政策・人件費、人件費以外の経費、施設等整備、借入金等返済、等の項目ごとに、「現状」「課題と原因」「対応策(目標)」を組み立てていく。『参考資料』ではこの工程やその評価のサイクルの様式等も掲載している。さらに、計画が策定できたら、5年程度の財務シミュレーションを行い、財政的な裏付けとなる財務計画を作成する。各部署の責任者からの意向を確認し反映させるため、Ⅱ章で作成した収支シミュレーションよりも具体的な計画になる。そして、各年度の予算作成では、この財務計画と連動させる必要がある。予算の未達は、翌年以降に未達分を上乗せしなければ財務計画を達成できないことになる。経営改善計画策定後の実行段階において重要になるのが、いわゆるPDCAサイクルの循環と進捗管理である。計画策定が「目的化」し、計画が机上の空論とならないよう、毎年度こ経営状態の情報の共有計画策定の体制(チームの編成、理事会での議論)計画における改善戦略計画における実施体制1.計画の策定ポイント2. 計画の実行・管理、検証

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