カレッジマネジメント239号
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36(5)小括(1)理事選任機関に関する改正法の内容(2)理事選任機関のあるべき姿め、資金拠出者には学校法人の持分が与えられず、学校法人には持分権者(オーナー)が存在しない。学校法人は「公共のもの」といわれる所以である。学校法人制度におけるガバナンスの最大の特徴は持分権者(オーナー)によるガバナンスの欠如といえる。 以上の通り、持分権者(オーナー)不在の中、経営者に対する規律付け(とりわけ選解任)の役割を誰に担わせるかが決定的に重要であり、これがガバナンスの主体の問題である。この点については、理事選任機関の制度設計として、後記2において詳しく解説する。以上がガバナンスの基本的事項についての解説である。改正法では、理事選任機関が、あらかじめ評議員会の意見を聴いた上で、理事を選任し(改正法第30条第1項、第2項)、一定の事由に該当する場合には、理事を解任できると定められている(改正法第33条第1項)。本改正に至る過程では、評議員会を理事選任機関とする改創業者・寄附者(資金拠出者)主体ガバナンス会社:株主学校法人:?*内部統制経営者* 学校法人において、経営者に対する規律付けの役割を誰に担わせるかは法令上定まっておらず、各学校法人の制度設計に委ねられている(詳細は後記2参照)。学校法人客体目的規律付けの方法経営者①不祥事・コンプライアンス違反の防止②必要な改革やリスクテイクの後押し選解任、報酬、監査、情報開示など規程等の整備、権限分掌、業務記録の保持、内部監査など組織全体正案が検討されていたが、紆余曲折を経て、最終的には、理事選任機関の構成、運営等について、柔軟な制度設計が許容されることとなった(改正法第29条)。したがって、現行法と同様、(その適否はともかく)理事会を理事選任機関とすることも可能であるし、評議員会その他の機関(例えば、学校法人の設立母体である宗教法人や創業者一族など)を理事選任機関とすることや、これらを組み合わせて理事選任機関としたりすることも可能である(以下、理事選任機関の各類型については「理事会型」、「評議員会型」、「その他の機関型」、「混合型」と呼ぶ。)。理事選任機関の制度設計を検討する前提として、理事選任機関のあるべき姿を具体的にイメージしておくことは重要である。経営者への規律付けという理事選任機関の役割に照らすと、株式会社において同様の役割を担っている社外取締役の議論が参考になる。以下のイメージは、モニタリング・モデルと呼ばれるガバナンス・モデルにおける社外取締役の役割を参考にして作り出した理事選任機関のあるべき姿のイメージである。あくまでも1つのモデルに過ぎないが、参考にされたい。①経営者は、学校法人から経営を委任された専門家として、業務執行について広範な裁量を与えられ、策定された経営計画の下、これを効率的かつ公正に実行し、所期の成果を達成しながら学校法人の永続的な発展に貢献している。②一方、理事選任機関は、経営者による経営判断を基本的には尊重しつつも、経営者から独立した立場で、経営をモニタリングしている。具体的には、経営計画の立案に積極的に関与し、経営目標を明確に定めるとともに、経営計創業者・投資家(資金拠出者)株式会社【学校法人】【株式会社】[理事選任機関のあるべき姿のイメージ]法的関係の切断持分権者持分権者によるガバナンスの欠如寄附による資金拠出(寄附行為)不在株主権の取得出資持分権者(株主)持分権者によるガバナンス理事選任機関の制度設計〜あるべき姿と検討の際の視点〜2

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