49進路選択の早期化・安全志向が定着無理をするよりも、手の届く範囲で等身大の進学をしたい進学情報メディア編集長から見た高校生の入試選択多面的評価は自分の個を認めてくれる入試形態まず高校生にとって入試選びで大事なのは、周りに入試制度や自分に合う入試について教えてくれる人がいるか。また、大学等に興味を持つ初期認知段階でも、行きたい学校が決まって入試方式を決める段階でも、信頼の置ける目上の人の影響を受けやすいのは共通しています。ただ、現在の入試制度は昔に比べて複雑なので、「今の入試制度を知っている」身近な先輩や兄弟姉妹にアドバンテージがありそうです。今の高校生のなかでも、特に志望校は決められても併願校を選ぶ(志望校に不合格だった場合を想定する)のが苦手な人は、志望校自体も「早く確実な道を選ぶ」傾向が強いと感じます。自分が合格する可能性が高い学校や入試を見極めたい意向や、受験機会が複数あるほうが安心という感覚は、コロナ禍×入試改革で先輩達の苦労を見てきた彼らの、世代的な感覚なのかもしれません。関連して、大学選びでは大学のブランドよりも「等身大の自分に合うかどうか」という感覚が強い傾向があります。半年間受験勉強を頑張った後の自分の可能性よりも、今現在の自分で選べる範囲で選ぼうとする。身の丈に合ったところで、年内で入試が終わるほうが嬉しいという人が多い印象で、早い人では高校入試の段階で生徒数に対しての指定校推薦枠数までチェックしている等、世代として「手堅い」。コロナ等の影響で「先がどうなるか分からないから早く安心したい」という思考に拍車がかかっているのかもしれません。また、今の高校生は保護者との会話が多く、その傾向はコロナ禍でさらに顕著になりました。リアルの進路指導が満足に行えなかった期間、高校生の主な相談相手は保護者でした。そうした相談相手がいることも、「今の自分を肯定し、今の自分で勝負する」ことの後押しになっていそうです。また、大学がこれだけ多いなか、少し頑張れば手が届くランクに自分を受け入れてもらえるところを探せる環境も影響していそうです。入試制度を「早く進路を決めたい」「今の自分に合っているところを選びたい」を軸に見た時、基礎学力で勝負できる高校生は、自分の成績をベースに一般選抜で偏差値上位を狙っていく感覚である一方、自分の強みを色々出せる高校生は、多面的に自分を見てくれる総合型選抜を選びます。そこでは大学のブランドよりも自分とのマッチング・フィット感が大事になるはず。だから、総合型選抜で評価されて入学できるのはとても嬉しいことではないかと思います。本質は多面的に評価してくれる枠があること。企業の採用と感覚が似ていそうですね。リクルート『スタディサプリ進路』編集長 仲井美夏(文/鹿島 梓)第2特集●大学入学者選抜の現在地「今」の自分で早く確実な進路を確保したい高校生入試は「『今の』自分に合っているか」が選択の軸に
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