50高校教育の変化と大学入試の変化が同時に起こっている高校のリアルを知る生徒の多面的な能力をどう評価するか高校みになっています。八王子東高校の場合、新課程が始まる1年前から新たな評価法を確立するための準備を開始しました。もともと初等教育では観点別評価が導入されていました。成長段階に応じて多様な観点から評価するやり方が主流だったのです。一方、従来の高校ではペーパーテスト偏重型の大学入試に対応しなければならないという側面もあり、知識・技能以外の評価をすることに慣れていませんでした。そこで私達はまず、中高一貫校を経験された先生を講師として何度も校内研修を行いました。そしてその方々を中心にルーブリックを作成し、生徒を評価する仕組みを作ったのです。新課程に示された学力の3要素に基づいて生徒を評価する際、議論の中心は、「思考力・判断力・表現力」と「学びに向かう力・人間力」の評価です。まず思考力・判断力・表現力を評価するには、考えをまとめる機会を授業のなかで増やす等、授業のやり方を変えなければなりません。従来の高校では、いわゆる「チョーク・アンド・トーク」式の授業が多く展開されていましたが、教師が板書をしたり話したりする時間を短くすることで、生徒が能動的に考えたり互いに議論したりするスタイルの都立高校教諭から東京都教育委員会で指導事務にあたる。都教育庁指導部高等学校教育指導課長等を務めた後、2012年から東京都立西高等学校統括校長、2018年から東京都立八王子東高等学校統括校長を務める。その間、2015年から全国高等学校長協会会長(~2017年)、中央教育審議会初等中等教育分科会委員、高大接続システム改革会議委員など多くの審議会委員を務め、高大接続改革、大学入試改革に直接関わる。2023年より現職。全国高等学校長協会 事務局長 Interview高等学校では2022年の新入生から、新しい学習指導要領が実施されました。新課程は学力を、「知識・技能」「思考力・判断力・表現力など」「学びに向かう力、人間力など」の3要素と再定義しています。これに対応し、大学入試のやり方も変わってきました。例えば大学入学共通テストで記述式問題の導入が予定されていたのも、知識・技能以外の力を評価しようとする狙いがあったはずです。大学入試共通テストでの記述式問題導入は結果的に見送られましたが、これまでの出題を見る限り、マークシート式の枠内で思考力や表現力等を測ろうとする工夫はかなり見受けられます。一般選抜だけでなく総合型選抜等も含めて「入試は変わりつつある」というのが私の実感です。新課程への移行に伴い、高校では教育や評価のやり方を変え、生徒を学力の3要素に基づいて評価しようと努力しています。ただし、その道のりは平坦ではありません。私は2022年まで東京都立八王子東高等学校の統括校長を務めていましたが、対応にはかなり頭を悩ませていました。公立高校の場合、大まかな考え方が各都道府県の教育委員から示され、それを基に各高校が評価基準を決める仕組宮本久也 氏社会の要請に応えるため高校が変革を目指す現状を大学にも認識してほしい
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