カレッジマネジメント239号
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53高校を信頼することが独自入試の実現につながる探究学習は生徒の多様な力を伸ばすため、大いに役立ちます。ただし、マンパワーやノウハウが不足し、探究学習に注力できない高校もあります。そこで、大学や企業等外部といかに連携し協力を仰げるかが鍵を握りそうです。また八王子東高校でも行ったように、探究学習のマネジメントを専門に行う部署の新設も有効だと思います。マンパワーの不足は、進路指導の分野でも深刻です。多くの高校には「進路指導専門家」を置く余裕がなく、担当教員は授業の傍ら進路指導をこなしています。この先、入試改革が進んで多くの大学で独自の入試制度が導入されるようになると、丁寧な進路指導はさらに難しくなるでしょう。ICTを活用してキャリアパスポートの書式を統一する等、進路指導担当者の負担を軽くする取り組みが必要になるはずです。長きにわたって高等学校で教えてきた私には、大学にお願いしたいことが3つあります。まず1つ目は、高校をもう少し信用してほしいということです。イギリスやアメリカの大学入試では、各大学がそれぞれ基準を設けて学生を評価しています。高校の成績である程度の基礎学力があると認めた生徒に独自の物差しを当て、自学が求める能力の有無をチェックしているのです。これに対し、国立大学を中心とした日本の大学では、横並びの1次試験で基礎学力を確認した後、さらに2次試験でもペーパーテストを課しています。大学教育では知識・技能だけでなく、幅広い能力が求められるはずです。ところが、現状の大学入試ではペーパーテストだけが課されがちで、受験生を多面的に評価することができていないのではないかと思うのです。そこで、基礎学力の評価は高校に任せ、大学入試ではペーパーテスト以外を課すことで受験生の能力を多面的に見るようにして頂くのはいかがでしょうか。2つ目にお願いしたいのは、学生に求める素養をアップデートしてもらうことです。今の社会人には、課題を設定し解決する能力や、文理の枠を超えた知識・教養が求められています。そうした社会の要請に対し、大学も今以上に対応してほしいのです。現代は「コスパ」や「タイパ(タイムパフォーマンス)」が求められがちで、小手先の受験対策で効率良く志望校合格を目指す風潮が強まっています。しかし、そうしたやり方は間違っていると思います。正解のない時代に自律的に生きていくために、高校までの期間は、学校行事や部活動、そして探究学習等にもきちんと取り組み、人間としての基礎力をじっくり養うために使ってほしい。また、大学側にもそうした高校生を高く評価してほしいと感じます。そうした方向性をアドミッションポリシー等で打ち出す大学には、とても好感が持てます。例えば東京大学はアドミッションポリシーで、「入学試験の得点だけを意識した、視野の狭い受験勉強のみに意を注ぐ人よりも、学校の授業の内外で、自らの興味・関心を生かして幅広く学び、その過程で見いだされるに違いない諸問題を関連づける広い視野、あるいは自らの問題意識を掘り下げて追究するための深い洞察力を真剣に獲得しようとする人を歓迎する」と宣言しています。このように、大学が何を考えどんな人物を求めているかを、積極的に発信してほしいですね。そして3つ目にお願いしたいことは、高校が新たな時代に対応しようとしている現状を、大学側に知ってもらいたいということです。学び方や進路指導をより良いものにするため、高校が努力を重ねている現状を受け止めてもらい、そのうえで、大学側の対応を考えてほしいですね。地方では、その地域の国公立大学と高校が定期的に意見交換する場を設けているところがあります。こうした取り組みを全国に広げ、大学と高校がコミュニケーションできるような工夫ができるといいと思います。さらに、もっと多くの参加者が集う場を用意する手もあるでしょう。例えば八王子東高校では、大学の先生や小中学校の先生、PTA、地域の企業や有識者等が加わる「学校運営連絡協議会」を定期的に行っていました。こうした場を設ければ、どんな人物が社会から求められているか、そのために高校と大学はどのような協力ができるのか分かるのではないでしょうか。現在は過渡期なのだと思いますが、高校と大学が互いに手を取り合い、大学教育に必要な能力を養う環境を作れたら、それは素晴らしいことだと思います。(文/白谷輝英)第2特集●大学入学者選抜の現在地

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