改めて問われる3つのポリシーの実質化大学教育から入試を考える 文部科学省54分析や教育改善を支援する体制を構築している大学は63%、全学的な教育目標等とカリキュラムの整合性を検証する全学体制を構築している大学は46%に留まっている。こうした状況に関連して、平野氏は「教学をマネジメントする目的を共通認識化することが大事」と述べる。「中教審が言うからやる、ということではなく、こうした検証を積み重ねていくことで、効率的・効果的に教育目標を達成できるようになってくるはずです。評価のための評価ではなく、目的は大学教育の実質化。評価疲れの声も多く聞きますが、だからこそ、最初の目的共有と、それを達成できる設計が大事だと思います」。そのうえで、3つのポリシー実質化のキーとなり得るのが入試だという。図2に示されている通り、ポリシーの中で起点となるべきはDPだ。「APは他より先行して制度化された経緯はありますが、起点ではありません。この大学の教育の到達点は何か、即ちDPを起点に設計することが、教学マネジメントにおいて最重要です。追補では、APはDPを4年間で達成するためのスタートラインとして機能させるものと位置づけています」。大事なのは、「DP達成のために入学段階で必要なことは何か」がAPに明記されているかどうか。そしてその第一段階として、まずは初年次教育にしっかりついてこれるだけの水準を入試で問うているか。こうした点について、水準と幅を踏まえて定義すべきがAPというわけだ(図3)。2002 年文部科学省入省。高知県教育委員会生涯学習課長、高等教育局国立大学法人支援課課長補佐、スポーツ庁競技スポーツ課課長補佐、高等教育局大学振興課大学改革推進室長、総合教育政策局教育人材政策課教員免許企画室長を経て、2022 年4月より現職。文部科学省 高等教育局 大学教育・入試課大学入試室長Interview大学入試行政においては、2021年に「大学入試のあり方に関する検討会議」「大学入学者選抜における多面的な評価の在り方に関する協力者会議」の各審議が取りまとめられて以降、その提言内容に即した実行推進フェーズが続いている。そんななか、2023年2月に中央教育審議会大学分科会において教学マネジメント指針(追補)が公表された。大学は教学マネジメント確立の観点から入試を設計する必要があるとする内容だ(概観:図1)。その意図について、平野博紀大学入試室長にインタビューした。読者の方々には周知の事実ではあろうが、図2に改めて3つのポリシーについてまとめた。2012年の中教審「新たな未来を築くための大学教育の質的転換に向けて(答申)」で示された「大学改革」において、その軸足となる概念であり、2016年にガイドラインが公表され、2017年より策定・公表が義務づけられたものである。3つのポリシー策定は義務化されている事項だが、その実質化が課題だ。文部科学省が2023年9月に公表した「大学における教育内容等の改革状況について(令和3年度)」では、3つのポリシーの達成状況を点検・評価している大学は89%、点検・評価のためにDPで定める「学位を与える課程共通の考え方や尺度」を策定している大学は68%、学修状況の平野博紀 氏大学教育の伸びしろを判定する入試を──教学マネジメントと入試の関係性をどう考えるか
元のページ ../index.html#54