カレッジマネジメント239号
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61学科ごとに示された「学科の目標」「求める学生像」をベースに評価方法を構築高大接続や大学教育の進化に総合型選抜が寄与「学科の目標」社会学と関連学問の視点と方法を用いた探究学修の実践を通じて、さまざまな場において、的確に状況を把握しつつ課題解決に向けた交流を進めることができる人物の育成をめざします。「学科が求める学生像」①現代人の行動や心理、現代の社会・文化事象に関する本や新聞記事を読んでおり、その経緯から、自身が入学後、探究したい事柄や問題について、筋道を立てて説明することができる。②人間や社会のあり方について深く考える内容の文章に粘り強く取り組み、一定の理解を得るために必要な基礎学力(特に「国語」「英語」「地歴公民」)を有している。③一般社会における情報技術の必要性や役割を理解しており、社会統計や社会調査(フィールドワーク)の実習を経験することを通じて、情報やデータを収集・分析する力を高めたいと考えている。※募集要項より抜粋・下線は編集部各選抜方法の設計意図について聞くと、多面的に各学科とのマッチングを見ていることが分かる。まず、大谷大のアドミッション・ポリシー(AP)は学部別に設定されているが、それに加えて「学科の目標・学科が求める学生像」を定めている(上図)。この「学生像」では、学生に何を求めるのかがスキルレベルで端的にまとめられており、この解像度の高さが、学科ごとの評価方法の設計につながっていると察せられる。「学科の学びに即して受験生が選択できるレベルまでかみ砕いています」と渡邊氏はその意図を述べる。このように、学科ごとの学びの内容、そこに必要な資質・能力を明示し、それを測るための入試設計になっているのが本AO入試最大の特徴といえる。評価方法を概観すると、まずエントリーシートは、受験生自身の興味・関心と学科とのマッチングを見る重要な書類だ。小論文は、学科講義を受け、その内容を踏まえたテーマについて論述する形式で、「講義を受けてノートにとるという基本的なアカデミックスキルが身についているか、学科が扱う分野への関心等を見ています」(渡邊氏)。評価基準として、①着眼点の面白さ、②論述展開と説得力、③文章表現力、④誤字・脱字等の有無、⑤講義内容及び課題の理解度の5つが明示されており、特に①や⑤で学生の関心の度合いを見ているという。第2次審査は、全学科面接を必須とし、学科によっては加えてセミナーを課す設計だ。例えば、社会学部では2学科ともセミナーとしてグループワークを行っているが、これは「入学後、学外に出ての学びやグループワークが多数ある例)社会学部 現代社会学科ため、周囲との協働性やコミュニケーション力等が備わっているかを見ています」。なお、第1次審査と第2次審査で日程を分けているのは、「第2次審査で丁寧に選抜するためには、第1次審査である程度人数を絞る必要があるため」だという。入学定員768名のうち、AO入試の募集人員は158名と約20%を占め、5人に1人が本入試で入学する。ほかの入試を経て入学する学生との違いについて、「GPAとの関係等を分析してはいるものの、小規模校で必要なデータ数を揃えづらいことも相まって、はっきりとした傾向は出てきていません」と渡邊氏。「逆に言うと、一人ひとり異なる個性を持った、多様な学生が入ってきているということになるのかもしれません」と続ける。定性的には「やる気のある元気がいい学生が入ってきている印象」だという。また、経営的な観点においては、定員充足や休退学率の低減の面での期待が大きいという。「本学で最も早いタイミングで実施される専願制の枠ですし、昨今、関西の高校生の受験行動が前倒し傾向にあることからも、定員充足の観点において重要度は高い。また、タイプが多様で、周囲にも多様な影響をもたらしてくれて、かつ、第1志望で、学科とのマッチングもクリアしている学生を受け入れられる枠なので、休退学率の低減への貢献も期待できます」と渡邊氏。本入試は今後も強化していく方針で、2025年度入試からはAPをより学力の3要素に対応した形に刷新する予定だという。そのうえで注力したいのは高大接続だ。「高校生と大学の学びとのマッチングというところからもう少し遡り、高校側の探究と大学の学びをいかにしてシームレスに繋いでいくかが将来的な課題。その際に、このAO入試が鍵を握る枠だと認識しています」と渡邊氏。入学前教育を充実させること等も検討中で、2024年度入試からは試験的に、公募制推薦入試の専願枠の合格者の入学前教育として集中講義型のプログラムを実施し、入学後に単位化(2単位)することを始めている。「変化の只中にある大学教育において、より社会のニーズに応える教育を設計していくうえで、総合型選抜のように多様な素質を測る入試は、今後大きなプレゼンスを持つことになると思います」と渡邊氏は(文/浅田夕香)先を見据えている。 「学科の目標」「学科が求める学生像」第2特集●大学入学者選抜の現在地

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